レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2019.5.10 白井操の料理講習会

2019/5/20 

「長いGWも終わって、お財布や体調やご家族の都合などいろいろある中で来てくださってありがとうございます」白井の一言でお客様も思わずほっこり。試食は「魚のムニエルに味噌風味のマッシュポテト添え」を。

「お魚が遠い存在になっているのはさみしい」とまずは鮮魚売り場の白木さんからお話を。「試食にはトラウトサーモンとこれから夏にかけておいしくなるスズキをおすすめしました。サーモンには脂がのったアトランティックサーモンとあっさりしたトラウトサーモンの2種類があります」。アトランティックサーモンはサケで、トラウトサーモンはニジマスを海で育てたもの。海で育つと見た目も全く変わってしまうそう。サケは生では食べないのに比べ、生でも食べられるものをサーモンと呼ぶのだそうです。「サーモンやスズキはにおいが苦手な方も多いので、今日は塩と酒と昆布で旨み漬けにしてから、ムニエルにしました。いい魚に出会った時、当日食べられないとあきらめずに、この方法を試してみて」と白井。

「鮮魚ではこの時期、貝がおいしいですね。貝や海藻は春の味わいです」「大きなタイラギ貝が並んでいましたね。食べやすくお刺身にもしてくれるから、外で食べるよりずっとお安く楽しめます。貝殻を洗ってオアシスで花活けにしたことも」「ぜひ売り場を覗いて気軽にお声がけください」と白木さんも笑顔で。

「このムニエル、皮はカリっと中はふんわりでおいしい!焼き方のコツは?」客席からの質問に「小麦粉をつけたらフライパンにオイルをなじませ、上になるよう盛り付けたかった皮目からじっくり焼きました。蓋をせず、焦げ目が付くまで我慢するのがコツ。反対側も火が通って白っぽくなるぐらい。それから裏を軽く焼いて仕上げます。今日のソースはマッシュポテト。隠しワザはお味噌汁です」。残り少なくなったマヨネーズに、味噌汁の残り汁を容器の口からチューッと吸わせて、蓋をして容器を振ってよく混ぜ、つぶしたじゃがいもへ。

「この姿に、うちのスタッフからはたまに止められるんだけど。でもなんだか楽しいですよね。そんな話題で盛り上がるのも食卓でのごちそう。盛り付けをきちんとすればおもてなしにもOK」。瓶に少しだけ残ったマスタードに酢・オリーブオイル・砂糖・塩を入れてフタをして良く振ってソースに。「液体のものを入れると大抵うまくいきますよ」。トマトをそぎ切りにしてフライパンで煮溶かしたものと合わせたマスタードトマトソースはソーセージに添えて。トマトはグルタミン酸の宝庫。市販のトマトソースにはめんつゆを。容器についたトマトの旨みでめんつゆがよりおいしく。もちろん刻んだトマトを加えても。

「ドレッシングの中にたんぱく質を入れるサーモンドレッシング。電子レンジでチンして、皮と骨を取り除きます。マヨネーズ・レモン汁・こしょう・砂糖で味を調えて。野菜は湯がいた豆や玉ねぎ、トマト、キュウリ、レタスなどなんでも。野菜もたんぱく質も両方大事したいですね」。

「煮汁はお宝です。煮汁に油と酢を入れるとドレッシングになると知っておくと色んな応用ができるように。青菜などの煮びたしの煮汁でまず作ってみて。金山寺味噌の残りをお酢で伸ばして豆腐やキュウリ和えにも」。
最後は白井の元気を支える発酵食品の話題に。今回も盛りだくさんの内容でした。     (文:土田)

セミナーレポート 2019.4.26 剣菱酒造株式会社 代表取締役社長 白樫政孝さん

2019/5/9 

ゲストは剣菱酒造株式会社 代表取締役社長 白樫政孝さん。「創業より500年、変わらないのはこのマークと味です」と白樫さん。「剣菱に3つのルールがあります。一つ目は「止まった時計でいろ」。流行を追うと一歩遅れる。時代の好みに流されず、自分の味を守っているとまたその時代がやってくる。止まった時計は1日2回必ず正しい時を刻むということです。二つ目「お客様からいただいたものはお客様の口に」。頂いたお金は、よい原料の入手や美味しく造る手間に当てること。三つ目は「適正な価格でのご提供」です。身分によって食べるものが大きく変わらないのが日本の食文化。誰でも買える価格にすること。余分な費用をかけないため、営業と広報を置かず、私が兼任しています」と柔らかな物腰で。

試飲は自ら燗をつけてくださった「黒松剣菱」を。「ツーンとくるのは温度かお酒を間違っています。冷酒は香りが高いお酒が作られるようになった30年前ぐらいからの飲み方。落語や歌舞伎でも燗酒が一般的だったことが分かります。飲むスピードが1/7になって体にも優しいんです。」「白樫さんに出会って燗酒を飲むようになりました。じわ~っと体に染みてお酒は薬と言われるのも分かる気がしますね」と白井。「清酒の発見の時期と同じころ、酒に焼酎を入れると、旨みと甘みがあるのに切れる味わいになることが分かり、それが江戸で大流行し、上方の酒としてもてはやされました。醸造アルコールは蒸留回数を増やしアルコール度数を上げた米焼酎のようなもの。化学的な何かを添加しているというのでは全くありません。ぜひ燗で味わってください」と純米酒との違いを。

試食はチーズ・オン・ザ・テーブルの「コンテ12か月熟成」と「エポワス」に生ハムを添えて。常温で「瑞穂 黒松剣菱」の試飲もご用意。「フランスで人気が高くフレンチレストランでよく使われています。フランス向けイベリコ豚PRイベントは瑞穂指定です」。キノコのような香りを持つ瑞穂はチーズやキノコなど山のものと、黒松は磯や醤油の香りで海産物や和の調味料などに合うそう。「似た風味や味わいのものとのペアリングを基本に、色々楽しんでください」と白樫さん。

「お米が大好きな祖父に連れられて小さい頃はよく田んぼでどじょうやザリガニで遊んでいました」。三木市・加東市の20集落と契約し、直営の田んぼもお持ちです。「生き物についた泥が落ちにくいのがいい田んぼ。保水力があって日照りでも乾かないからです。私を田んぼで遊ばせた祖父の意図が30歳になって分かりました」。日本で最初の農水省登録検査機関に。等級検査まで自社で行う酒米へのこだわりも随一。
秋には但馬・丹波・越前・能登から90人の蔵人が集まり、10人の社員とともに酒造りが始まります。満足して働いてもらうために料理人も雇われ、週二回は蔵人が食べ慣れた日本海から魚の取り寄せも。「蔵人さん達もお酒を飲まれるの?」「はい、半年で一升瓶三千本ぐらい」「えーっ!」。

「ウチは機械は使わず人海戦術です。古い味を守ることは古い造りを守ること。米を蒸すのも結露せず余分な水分を吸ってくれる木の甑。暖気樽を作る最後の職人さんに来てもらって社員2人を育ててもらっています。堺に1軒だけ残る桶屋に出向いて3人に勉強してもらい、昨年は木の道具を作る工場を建てました。壊れた機械をばらして修理して藁縄も作れるようにしました。五穀豊穣を感謝して神様に奉納する酒にはビニール製より藁縄がいい。日本の文化と伝統は心に根ざしているもの。ウチが諦めたら終わってしまう、次の世代に残さなければと。古いものは作り続けることでしか伝えられないと思っています。」「なんだかジーンと来ましたね。」「古いタイプの味わいですが、時々思い出して飲んでもらえたら嬉しいです」。ニコニコと和やかな笑顔で、大切なことをしっかり伝えてくださいました。(文:土田)

セミナーレポート 2019.4.19 白鶴酒造株式会社 代表取締役社長 嘉納健二さん

2019/4/23 

灘五郷を代表する酒蔵として全国に知られる白鶴酒造株式会社。今回のゲストは代表取締役社長の嘉納健二さん。まずは映像で白鶴酒造のご紹介から。「昔の酒造りの様子が映像で残っているのがすごいですね。」「これは昭和3年に記録用として撮影されたもの。当時は全てが手作業でした。今は機械で運んだり、木の棒も空気抜きができるステンレスの棒に代わったり。機械化してもやっている作業は同じというのが面白いところです」。
江戸中期1743年の創業から11代目。「20代の若さで社長を引き継がれて、トップメーカーを維持するというのは大変だったでしょうね。」「現場ではデータや資料がきちんと継承され、伝統は口伝えで脈々と受継がれています。蔵で働いてくれる皆さんやお酒が好きで飲んでくださるお客様に支えられて今があると思います。」「白鶴さんは『まる』のような気軽に楽しめるお酒からこだわりのお酒まで幅広く造ることができるとても貴重な存在、すごいことなんですよと他の蔵の方が言われていました」と白井。

私設の白鶴美術館は白井のスタジオのすぐ近く。「実はご近所なんですよね。もう20年以上も前かな、『白鶴通信』でレシピ提案させていただいたのは。」「酒に合うのは塩辛いものとされていたのが、食事にお酒を合わせる時代になってきた頃です。日本酒と相性の良い食の提案を豊富にいただいて、それを広めたいという思いがあって。」「日本酒はワインより受け入れる食材の幅がずっと広い。苦みや酸味も引き受けてくれますよね」。
春の苦みを残した蕗の出汁浸しとカカオ70%のモンロワールのビターチョコレート、つくしの干菓子の3品を試食に。ペアリングを楽しむためにご用意くださったのは「超特撰 天空 袋吊り 純米大吟醸 山田錦」。「吟醸酒用に酒米を38%まで磨けるようになったのは昭和に入ってから。吟醸用の酵母も発見から100年ほどです。吟醸酒の歴史は創業からの歴史を考えるとまだ浅い。天空は全て手づくり。搾ることはせず、もろみを袋にいれて吊るし、雫だけを集めました。」「大切に味わいたいですね。」「酒好きな人が飲むのにはぐい飲みのような大きな器もいいですが、もともとお酒は神様への捧げものを神様がお酒にして返して下さったものと考えられてきました。直会のように盃で少しずつ飲むものです。口に含んで広がる味わいを楽しんでください。」「おいしい!ふくよかってこういう味をいうのかな」「淡麗・辛口にも魅力がある、でも甘味を感じるのが日本酒の良さ。これからは器の提案もしていきたいと思っています」。

今後を聞かれて「日本酒には伝統的というイメージを持たれがちですが、まだまだ進行形だし、開発の余地やおいしい要素を引き出す方法はあると思っています。新しい酵母を使って、レモングラスのような香り、柑橘の香りとほろ苦さ、熟した果物のような風味を持つ3つの日本酒を企画し、買ってくれる人が集まったら造るというクラウドファンディングを成功させた若い社員のチャレンジも」。この取り組みは話題を呼び、今日の毎日新聞に掲載されたそう。
独自に開発した酒米「白鶴錦」の田植えツアーや、社屋の屋上に田圃を作り小学生の校外学習など食育も大切に。「お酒は米作りから始まっています。お酒が工場で造られるものと子供たちが思ってしまわないように」とその思いを。

「5月1日に搾る『令和 初しぼり』。日本の新元号を祝うのにはやはり日本酒がいい。身近にある灘五郷の酒で、地元の美味しいものや旬の味をゆっくり楽しんでいただけたら嬉しいです」と笑顔で締めくくられました。大吟醸をじっくりと味わいお客さまも大満足。日本酒のこれからがもっと楽しみになったひとときでした。兵庫県の30の蔵元が集い新元号を日本酒で祝う前夜祭も西宮阪急で開催予定です。(文:土田)