レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第29話 サラセニア

「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、 何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ! 今回からは、我がフラワーセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、 その季節ごとに咲くとっておきの一品を紹介していくぞ!  栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、 形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、 そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを紹介していくから、楽しみにな!

【参加募集中】ムッシュ・フルーリと春の花探検!
加西市にある兵庫県立フラワーセンターでは、ムッシュ・フルーリ園長の植物セミナーが毎月開催されています。思わず「へぇ~!」と言ってしまう、とっておきの話題がいっぱい。大人気のセミナーです。
フラワーセンターのお花とムッシュフルーリに会いに行きませんか。

『ムッシュ・フルーリの「へぇ~!」な雑学』開催日程
➀5/15(土)②6/19(土)③7/17(土)
(各13:30~15:00 ご参加には予約が必要です。)
*予定は変更になる場合がございます。
●予約・お問い合わせは
TEL:0790-47-1182(兵庫県立フラワーセンター)
★新型コロナウィルス感染防止のため、下記の期間は臨時休業いたします。
臨時休園期間:2021年4月25日㈰~5月11日㈫

第29話 サラセニア

5月の声を聞くころになると、我がフラワーセンターが誇る食虫植物のコレクションの一つ、サラセニアの美しくも妖艶な花が咲き始めるんだよ。ところで、サラセニアを知っている人は多いと思うんだけど、その花を見たことがある人は意外と少ないんじゃないかな? どうだい、みんなは見たことあるかい?

食虫植物は虫を捕まえて自らの栄養源に利用しているんだけど、どうして植物が動物である虫を食べるようになったか知ってるかい? そりゃあそうだよなぁ、知らないよね。じゃあ種明かしをするかな。
まず、食虫植物は、世界中に12科20属500種類にも及ぶグループなんだけど、分類上その12科は分類学的にも遠縁のものが多くて、ただ虫を捕まえて栄養補給しているという共通点があるだけなんだな。じゃあ、どうして縁もゆかりもない植物たちが、虫を捕まえるようになったのかって? それには大きな共通する理由があるのさ。その理由は、「食虫植物が他の植物たちとの生存競争に勝てなかったから」っていうことなんだよ。つまり、食虫植物は、いわゆる「負け組」なんだ。

サラセニアの蕾(細い茎の先で下向いている丸い形状のもの)▼

他の植物との生存競争に負けた食虫植物のご先祖たちは、植物が育ちにくい栄養分が乏しいところで生きていくしかなかったんだな。もちろんそんな貧栄養のところでは、十分な生育が望めないから、ご先祖たちはよーくよーく考えた。そこで閃いたのが、栄養分を吸収するのは何も土の中からだけじゃないってこと。だから、初期の食虫植物たちは、自分たちの根元付近にたまたま落ちた虫の死骸が、細菌などによって腐って分解され、そこから窒素などの栄養分が生じることを発見したんだ。 はじめはそれを根から吸収してたんだろうけど、気の遠くなるような長~い年月をかけて、仕組みをどんどん改良させて、積極的に虫を誘き寄せて捕らえ、しかも自ら分泌する消化液で分解して、葉から栄養分を吸収するっていう究極の技を編み出したんだな。どうだい凄いだろう? 植物は黙って虫に食べられているだけじゃないんだ。

食虫植物には、サラセニアやウツボカズラの様に葉を筒状や袋状変化させて、そこに虫を落としこむ「落とし穴式」、モウセンゴケやムシトリスミレなど葉に生える沢山の腺毛から粘液を出して絡めとる「粘着式」、ハエトリソウの様に葉に感覚毛というセンサーを備え、それに虫が触れると瞬く間に葉を閉じて捕獲する「わな式」と、虫を捕まえる方式には三つの方式があるんだけど、それぞれ、ご先祖たちが苦労して、改良に改良を加えて獲得した仕組みなんだぞ。

では、本題に戻って、サラセニアっていう植物は、みんなも知っているとおり葉が筒状になった「落とし穴式」の食虫植物で、文字どおりその筒の中に虫を落とし込んで捕らえるんだ。その筒状の葉の形や色、そしてその表面の模様等が奇麗なので、観葉植物として食虫植物マニア以外の人にも育てている人が多いんだね。
サラセニアは、北アメリカの東岸に広く分布していて、暑さにも寒さにも強いことから、日本の気候にも適応して栽培しやすいってのも万民受けしている理由の一つだね。

◀サラセニア(キバナヘイシソウ)

さて、サラセニアの花だけど、他のどんな花とも似ても似つかない独特の形をしているんだ。花は下を向いて咲き、がく弁と花弁が5枚ずつで、雄しべはたくさんあるけど雌しべは1本。しかしその先端が大きく五つに分かれて反り返り、雨傘を逆さにしたような形状になっているんだ。雨傘で言うなら、5本の骨の先に柱頭があり、その柱頭と柱頭の間から、5枚の花弁がぶら下がっているんだ。言葉で説明してもなかなか花の形は思い浮かべられないけど、花の写真を見れば理解できるかな? どうだい、みんなが想像していた花の形に近いかな? しかも華やかで奇麗だろう?

サラセニアの花(赤花)▲   サラセニアの花(黄花)▲

この独特の形は、昆虫を利用して効率よく花粉を雌しべに運んでもらうことができるように、これもまた、気の遠くなるような長~い時間をかけて、作り上げてきた形なんだ。蜜や花粉を食べようとして、花弁と雌しべの隙間から逆さになった雨傘の中に入った昆虫たちは、体中に花粉をまといながら、またまたその隙間から出てくるんだけど、その際に雌しべの先の柱頭に触れることにより、必ず花粉が柱頭(雨傘の骨の先端部分)に付くんだよな。よくできた仕組みだと思わないかい?
           花びらだ脱落した後のサラセニアの花(雌しべの先端が雨傘様の形状)▼

結局、サラセニアっていう植物は、自分の繁殖のために虫たちを利用しつつ、花期以外の時期には筒状の葉に虫たちを落とし込んで栄養補給に利用しているんだな。植物の世界広しと言えども、これだけ徹底的に虫たちを利用し尽くしている植物は他にはないよな。
是非、一度フラワーセンターに来て、サラセニアの生き残り戦略を目の当たりにしてみては如何?

 

「サラセニア」を見に行こう!
兵庫県立フラワーセンターHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

 

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