レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2017.8.25 白井さんの料理講習会

2017/8/31 

「今はもうお歳暮カタログのロケで全国を飛び回ってます。」と笑顔で始まった白井の料理講習会。毎月出演しているNHK「きょうの料理」8月のレシピのご紹介と残暑を乗り切る元気の素についてのお話を。
「どうしていつもそんなに笑顔でいられるの?ってよく聞かれるんです。いつのまにか元気のための習慣になっているのは、体を冷やさないように夏用・冬用と年中レッグウォーマーをすることや、枕元の小さいポットにお湯を入れて寝て、朝起きて、トイレ・うがいと済ませたら、先ず温かいものを一口飲むこと、起きる前に簡単な準備運動をすることかな。毎日おんなじでもつまらなくなるので、少しずつ変えながら続けてます。楽しい交友関係も元気の素として大事ですよね。日々の小さな幸せが明日の元気を支えてくれています」。

楽しく暮らすって何?今年で60周年を迎える『きょうの料理』、自宅の古いテキストを見ると40年前はもっと専門的だったと白井。「当時はダシもブイヨンも一から作って、先生に教えてもらわないと作れないような専門的な料理が多かった。今は見栄え良く、簡単で材料が少なく・・・が主流。ダシをとらないことに抵抗がない方も増えたと聞きます。それがダメとは言わないけど、昆布とかつおでちゃんととったダシの旨みがどれだけおいしいかは知っていて欲しい。楽しいことはそんなひと手間の中にある・・・そう思ってくださる方がこのセミナーに集まっているような気もします」。
8月の「きょうの料理」で紹介した「夏野菜のピリ辛肉みそ」「香味野菜のコールドチキン」の実演と試食を。「野菜もたくさん食べて欲しいけど、年配の方にやっぱりお肉は大事。バランスよく食べて夏バテ知らずに」。野菜の切り方や調理のコツも写真を交えて色々とご紹介。和やかな時間が過ぎて行きました。                        (文:土田)

セミナーレポート 2017.7.28 株式会社やまつ辻田 辻田浩之社長

2017/8/4 

しっかりとした木製の台を組み、重い石臼が運び込まれ、木の持ち手を固定する小槌のコンコンという音が聞こえるセミナー前の会場。御岳の溶岩石で作られた特別なこの石臼から毎回山椒の得も言われぬ香りが会場いっぱいに広がります。

今回のゲストは株式会社やまつ辻田の辻田浩之社長。
山椒と大辛七味のおいしさを味わって頂くのに、白井が用意したのは「豚しゃぶと夏野菜のゴマ味噌かけ」。7月に「きょうの料理」で紹介したレシピの焼き鳥を豚しゃぶに変えて。「今日の魚売り場はいいサワラがたくさん並ぶそう。サワラなら骨を取って一口大に切って焼いて。このみそだれは魚にもよく合いますよ」と白井。

辻田社長は「今日の山椒は間違いなく世界一だと思います」と笑顔で。例年6月だったセミナーが今年は7月末になったことで、3日前に採れた最高級品種の山朝倉山椒をお持ちくださいました。「4月~5月は芯が柔らかいので実山椒として、そのまま10%の塩水で湯通ししたものを冷凍すれば冷凍庫で1年大丈夫。芯が固くなる7月、8月頃のものは粉山椒に。陰干しして芯を抜いて皮だけを粉にします。芯抜きはとても手間がかかる作業。大粒で芯抜きがしやすいということで世の中に出回るほとんどが和歌山のぶどう山椒ですが、最初の芳香が長続きしないんです。」山椒にはぶどう山椒以外に、主に実山椒として使われる養父の朝倉地区が発祥の朝倉山椒。海抜800~1000mにあって希少な山朝倉山椒の3品種があり、中でも山朝倉の粉山椒は一流の料理人や料亭が使われる他、生産量が少ないので多くは出まわらないのだそうです。「今日はセミナーの為に早採りさせた採れたての山朝倉100%。挽きたてを冷凍庫で保管いただければ、これ以上の粉山椒はないという訳です」辻田社長の言葉にみんなも納得。
「山椒には中毒性があってよく合法麻薬と言ったりするんです(笑)」山椒をしゃれた容器と巾着に入れて自らも持ち歩かれるとか。「山椒が3で塩が1」辻田社長がぜひ覚えて帰ってほしいと言われたのは山椒塩の黄金比。山椒は塩と出会って初めてうまくなる。山椒が痛覚を刺激するので1/4の塩でもおいしく感じることができ減塩効果も期待できます。ステーキ・唐揚げ・焼き鳥・ポテトフライを始め、野菜の甘酢かけや酢豚にも。「油に出会うと辛みが和らぐのでたっぷりかけても大丈夫。味噌とも相性がとてもいいので、色々試してみて!。楽しんでもらえたら嬉しいです」。
「最近は世界が山椒のおいしさに気づき始めて、チョコレートやアイスにも使われるようになりましたね」と白井。「世界の有名シェフからも引き合いがくるんですけど、収穫できる量が限られているのでなかなか対応できないのが現状です。ウチの山椒や七味の説明は友人に頼んですばらしい英訳にしたものがHPにありますよ」。
かつて10年間高校で英語教師をされていた辻田社長。生徒に教えるようにポイントを分かりやすく伝られます。「香辛料の鮮度を守るためには、光・空気・温度に注意してください。光を遮断する、酸素を抜く、温度を下げる、そのためには保存は冷凍庫が一番。」お客さまがメモをとられる姿はさながら授業のよう。今回は辻田社長が一番好きだと言われる夏向きの調合の暑気払いの大辛七味とうがらしをお土産に。使われる山椒は新物の山朝倉山椒を使ったこの時期だけの特別なもの。

石臼で山椒が挽かれ始めると会場は一気に爽やかな香りに包まれました。鮮やかな緑の粉をふるいにかける時はみんなで石臼の周りに集まって、世界一の山椒を五感で味わい、山椒に癒される素晴らしいひとときとなりました。
(文:土田)

セミナーレポート 2017.7.7 落語作家 小佐田定雄先生

2017/7/11 

柔らかな大阪弁で語りかけられる小佐田定雄先生は、桂枝雀師匠やざこば師匠、南光師匠、文珍師匠、笑福亭鶴瓶師匠と名だたる落語家の新作落語を手掛ける落語作家の第一人者。「忙しい中に何か小さな笑いをみつけてはふふっと一人笑ったり、誰かに話して一緒に笑ったり、人ってそんなことで頑張れるでしょ?」と白井。「あんまり思い詰めないのが落語。本人同志は真剣に怒っている喧嘩も、ちょっと引きでみると笑えるんです。聞いてみると大人が水無月のどっちが大きいかで揉めてるというような・・・」と小佐田先生。

「すごく売れているような芸人さんほど暗いって本当ですか?」「明るくて自分が楽しいという人より、何が面白くないかを知っていて、周りを楽しくすることをいつも黙~って考えているような人が多いですね。」「なるほど。落語家さんは落語を全部暗記しているんですか?」「長いものでも一言一句変わらない春団治師匠のような方もおれば、米朝師匠のようにいくつかポイントは押さえながら間は自由に話されたり、人によりけりですね」。長いものは1時間を超えるという落語の演目。いつでも演じることができる落語を多ければ60ぐらい、普通でも10は持っていて、お客さんの反応や前後の演目とのバランスを考えて落語会の当日に演目を変えたりすることもあるそう。
「枕といわれる最初のお話から本題の落語に入る時に羽織を脱がれますね。すぐ脱ぐのにみなさん羽織を着ておられて・・・」「羽織はお客様への礼儀。脱ぐのはいつでもいいんです。落語によっては途中で羽織を使うものもあって、枝雀師匠が脱ぎ掛けて、さりげなくまた羽織るのを見かけた事があります。」「枝雀さんの枕で、地球が滅亡して月に移住することになり、全員行けないので偉い人が来て選別を始める話が忘れられなくて。大工さんとか、お医者さんとか次々選ばれて行く中、「隅でワイワイしゃべってるあれは誰ですか?」「噺家です」「彼はいりません」と。私の料理研究家という仕事もいざとなると「イラナイ」の方だな~って笑えてきて。」「枝雀師匠は発想が独特。動いてる地球から動いてる月へロケット飛ばすなんて無理。舟から岸に上がるだけでもこけるのに・・・とかね。落語家さんの個性が一番出るのが枕で、ざこば師匠や鶴瓶師匠は当日あったことを即興でそのまま枕の話題に使うてます」。

聞き手の想像の中で話が進むため、登場人物は多くて同時に3人ぐらいまで。声色は変えずに間としゃべり方で演じ分ける落語。偉い人は上手にいる設定で顔の向きを変えるのが原則。「落語の台本はラクですわ。衣装やら、どこへはけるとか、考えんでええんで。」と小佐田先生。自分に起きたことを面白く話す私落語や、昔の言葉でそのまま演じる古典落語、時事ネタを盛り込んだ創作落語など、落語もジャンルは様々。「師匠から教わってまずは継いでいく、自信がついて初めて、時間をかけて自分の色にしていくんです」。人から人へと受継がれ、現代に語り継がれた落語。今、桂かい枝師匠と取り組まれているのは「古墳落語」の発掘。話は伝わっていないが古い文献にタイトルだけが残っている落語を見つけ、タイトルから想像して落語を創作して演じるというもの。「『屁臭最中(へくさのさいちゅう)』とか『ほたへちや』とか、要は内容がおもろしろくなかったんでしょう。『ほたへちや』は『ほたへち屋』なんか『ほたえ茶』なんかもわからないんです」。能や文楽、落語など古典芸能の垣根を超えて誰もが親しめる試みにも取り組まれる小佐田先生。「一ぺん舞台に来てみてください。きっと気楽で『な~んや』って思うぐらい。生の舞台は風がきて空気が日常とちょっと違う。ほんまは暇やから聞きに行くでええんです。」落語はまず楽しむもの、そんなメッセージがふんわり伝わってきました。
(文:土田)