レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

セミナーレポート 2019.2.8 香住鶴株式会社 九代目当主 代表取締役 福本芳夫さん

2019/2/15 New

モニターに流れる、杜氏と蔵人の手による「香住鶴」の酒造りの工程が分かりやすく紹介される美しい映像に、セミナーの開始を待つお客様が引き込まれます。「2月6日発売の雑誌『dancyu(ダンチュウ)』の毎年恒例の日本酒特集で、兵庫県のお酒として唯一掲載されました」と白井が紹介したのは、但馬を代表する地酒「香住鶴」の九代目当主で代表取締役の福本芳夫さん。創業は享保10年(1725年)吉宗公の時代。

「八代目の父から『酒は香りではなく味だ』とずっと聞かされていました。それを実現するのが生酛・山廃造りです。」「生酛って何ですか?」「『酛』というのは蒸米と麹と水を混ぜ合わせた清酒酵母の培養体です。まず『酛』に含まれる野生酵母などの雑菌を殺菌するのですが、ほとんどの蔵元は醸造用乳酸を使って2週間程で早く確実に殺菌できる『速醸造り』を採用しています。それに対して『生酛造り』は自然の力だけでじっくり1か月かけて行うやり方。まず土や野菜の中に自然に存在する硝酸還元菌の力で働きを抑えられた野生酵母が乳酸菌が生成する乳酸によって殺菌され、その後酵母が糖を食べて出すアルコールがその乳酸菌を殺菌します。数多くの工程を見守り促す職人の技が必要です」「山廃っていうのは?」「生酛造りの中の蒸米をすりつぶす工程を、蒸米の山を櫂で崩しながら行うことから『山卸し』と呼びます。後に蔵人の大きな負担になっていた『山卸し』に代わる新しい工程が考案され、廃止したということで『山廃』というんです」「へぇ~」。「生酛や山廃で作った酒は酸やアミノ酸が2~3割多くてしっかりした味わいの酒に仕上がります。十代目となる息子に『どうせやるなら全量生酛・山廃で行こう』と背中を押され、今ではそれが強みになっていると思います」。年間800~1000万人のお客様が但馬を訪れ、おいしい日本酒を求めて蔵にも多くのお客様が足を運ばれます。会場では「生酛 純米 香住鶴」を味わいました。

9月2日の新米入荷と同時に仕込みを始め、84本のタンクすべての仕込みが終わるのは翌年3月29日。大吟醸では完成まで65日もの日数を要します。五感と経験を駆使して蔵の微生物をコントロールし、自ら設計した酒を醸すのが杜氏の役割。「今の杜氏が初めて杜氏を任された年は最初の1か月で7㎏も体重が落ちました。蔵人を束ねるだけでなく、もし失敗したら蔵の経営が傾くこともある責任の重さを分かっているからでしょう」。
夜はやかんのお湯に徳利をしずめ燗酒を楽しむのが常なのだそう。「きちんとした料理屋なら『ぬる燗』『上燗』『熱燗』をちゃんと分かって出してくれます。うちの酒は味がしっかりしていて燗にもよく合う。アルコールも少し抜けて、吸収も良いので、酔いも早いが、すぐ分解されて体にもやさしい。寒いNYでは今燗酒が流行しているそうですよ」「電子レンジも便利だけど、湯煎の燗酒もぜひ楽しんでほしいなぁ」「料理に使う酒も料理酒ではなくて清酒を。味の違いを知って欲しいですね」「わぁ、同感です」。

最後に「福本家 商売心得 八カ条」をご紹介くださいました。先代の教えを基に次の世代に伝えるべき信条を自ら考えられたもの。「第一条 品質は会社を守る」から「第八条 地域の為に尽くせ、『積善の家に必ず余慶あり』」まで、心に響く言葉にうなずくお客様がたくさん。お土産として「コウノトリ育む酒米」を使用した「生酛 吟醸純米 香住鶴」を1本ずつお持ちくださったことを聞いてお客様もびっくり。アンケートにも「勉強になりました」とうれしいメッセージが寄せられました。
試食は香住鶴の酒粕にグラニュー糖をサンドして焼いたおやつと、アンリシャルパンティエの「ショコラプール」、備長炭炭火京おかき「高瀬舟」を。 (文:土田)

セミナーレポート 2019.1.25 白井操の料理講習会

2019/2/4 New

今回は白井の身の回りのちょっといいコトをレシピのご紹介や試食を交えてお伝えします。「『楽しそうに仕事してるね。普段何を食べているの?』こんな風によく聞かれます」体にやさしいものをと意識するようになったきっかけを振り返る白井。「まだ30代前半。地元のお祭りでだんじりを追いかけて、上の子供の手を引き、下の子をだっこして歩き回った後、体がだるくて発熱し血尿がでて入院することに。どうして病気になったのかなと考え、思い当たったのは、ひじき、豆、高野豆腐など懐かしい味わいのおかず、乾物が足りていなかったかな、と。大豆や高野豆腐など食べ方やレシピを工夫しながら意識して食べるようになり、それからずっと日々食卓に」。栄養のバランスを考えて、茹でたり、蒸したり、焼いたりした肉や魚とフレッシュ野菜を合わせるおかずサラダを一早く提案し始めたのもその頃。
「1回ピンチを経験したことが良かったのかな。今でも毎朝ラジオを聞きながら、ヨガの真似事のような体操を毎日30分して、途中閃いたことや思いついたことをメモしながら、体を温めて目覚めさせて一日が始まります。自分が感動したことや面白いなと思ったことを、誰かに伝えて「へぇ~っ」と一緒に喜ぶ・・・。そんな風に、楽しみながら仕事を続けて来られたのも元気の理由のひとつ」。
麹も昔から身近な存在。「麹を玉露につかうぐらいのぬるい湯に溶いて作る麹水。余ったもろみは塩もみした白菜や水菜と昆布と一緒にジッパー袋で漬けたり、糠床に足したり。麹は生っぽいソフトなものがおすすめ。甘酒もよく作ります。水気を絞った野菜と甘酒でべったら漬けにも。塩分が濃いお漬物はゆがいた野菜といっしょにゴマや鰹節をふって。塩分がだめな人はわさびとか唐辛子とか香辛料で調節を」。

試食は「こうや豆腐入り鶏そぼろの三色丼」。「大豆の保湿効果でそぼろがしっとり柔かに。ご飯の代わりに春雨や葛切りを使っても。菜の花のだし浸しはビタミンがだしに溶け出すので飲める程度の塩加減にして、残っただしをドレッシングや卵とじなどに使っておいしく活用しましょう」。高野豆腐のレジスタントたんぱくなど栄養面のすばらしさが様々なメディアで取り上げられ、年末からずっと店頭で品薄になっているため、旭松さんが特別に一人1/2箱ずつの高野豆腐をお土産にご用意くださいました。「私は昆布とかつおのだしを取るのが苦にならないけど、どうしても面倒と感じる方もいるはず。もしそれで料理が楽しくなくなるぐらいなら、めんつゆを使ってもかまわないと思います。このレシピは手軽にめんつゆで。だしに醤油とみりんを足してめんつゆの味にして作ってもOK。自由に楽しく作ってくださいね」。
「高野豆腐の酒粕仕立て」は仕上げに酒粕を加えて豊かな風味をプラスしたもの。「高野豆腐が鍋に入り切らない時は、ちょっと戻りかけた時に一つ取り出して、うまく隙間に埋まるようにカットして鍋に戻します。調味料は合わせてから全体に回しかけましょう。塩や砂糖を足すときも、そこだけ塩辛くなったり甘くなったりしないように煮汁と合わせてから」。

他にも「鶏のマーマレード照り焼きルッコラサラダ」と「エビマッシュルームドレッシング」のレシピを駆け足でご紹介。「例えば葉付きの小玉ねぎや山ウド。あ!と目についたものは買って味わってみて。『今日百貨店に行ってきたらね・・・』と数百円の幸せが食卓を楽しくしてくれるはず」。会場は今日も和やかな笑顔がいっぱいでした。
(文:土田)

セミナーレポート 2019.1.11 株式会社神戸酒心館 代表取締役社長 安福武之助さん、副社長 久保田博信さん

2019/1/23 New

新年最初のゲストはブルーのボトル「福寿」でおなじみの株式会社神戸酒心館 社長の安福武之助さんと副社長久保田博信さんのご兄弟。「阪急の青いギフトカタログで「福寿」を使った「牛肉の佃煮」を手掛けていただいたのがご縁の始まり」と白井。ご近所ということもあり、山田錦を使う日本酒の本作りもお手伝いいただき今ではすっかり仲良しに。「蔵ではお二人がTシャツやポロシャツを来ておられたり、多言語のパンフレットがあったり新しい風を感じました。」「あれは社員のユニフォームです。お蔭様で蔵に来られるお客様は年間15万人。小さな蔵ですが世界から多くのお客様が来られるので、16の言語でパンフレットを用意しています。現在は海外15か国へ輸出もしています。」重い日本酒を携え海外へ出向き、地道にPRを行ってこられた努力が実り、ノーベル賞晩餐会で饗される酒としても世界から注目を集める人気の銘柄に。「お二人とも英語が堪能ですものね。海外で好まれるのはどんなお酒?」「まず香りが大事。華やかでフルーティーだと入りやすいようです。海外で試飲していただいて面白かったのは、アメリカでは香りがあってのど越しがすっきりしたものを好まれるのに比べ、フランスでは味に複雑味があるものが好まれます。ワインへの造詣の深さを感じました」。

「昔からの酒造りを守るにも道具を作る職人がいなくなりご苦労されている蔵もあると聞きます。」「かつては但馬杜氏が蔵人を連れて城崎から酒を造りに来てくれていました。杜氏さんの高齢化もあり、5年後も10年後もこのおいしさを守るために、社員が杜氏の技術を学んで、年間を通じてお酒が作れるよう『社員杜氏』という体制を作っています。」「酒造りは同じやり方で作っても同じ味にはならない繊細な部分があります。お酒の味を決めるのは昔から「一麹、二酛(もと)、三造り」と言われ、麹が味を決める大きな役割を担います。そこで管理しやすく自分たちが思い描くような良い麹を作るためにたらいを使った『たらい麹』作りに取り組みました。ホームセンターでもたらいが手に入らず、代わりにプラスチックのケースで作ってみたところ、きわめて上質な麹をみんなが作れるようになり、大吟醸の一部商品に使用しています。」「伝統を守りながら、新しいことにチャレンジするというのがウチの考え方です」。ご兄弟の仲の良さがお話のリズムから感じられるのも和やか。

試飲にご用意いただいたのは「福寿」の「大吟醸」「純米吟醸」「超特撰純米酒」の3つ。「大吟醸」はりんごのような甘い香りとキレを感じるのど越しを併せ持ち、宮水でドライに仕上げた逸品。「純米吟醸」は旨みと香りとのバランスの良さが持ち味。「この味をベースに、もっと華やかさを求められるなら大吟醸、辛口が良ければ純米酒とご自分の好みがよくわかると思います」。香りは控えめながら旨み豊か、辛口でボディー感を楽しめる「超特撰純米酒」は40~50℃に温めるとカドが取れてやさしい味わいに。温度帯で味わいが変わる日本酒の魅力を楽しむのもおすすめだそう。試食は焼きたてのバケットに黒豆のディップとアンチョビをトッピングしたカナッペを。
「海外の方に日本酒のゲートウェイとして米と水からできるサケのことを丁寧に説明して理解を広めたいと考えています」「酒蔵だけでなくレストランやイベントホールなどをきっかけにお酒に関心のない方も含めて多くの方に楽しんでいただけるサービスを考えていきたいと思います」。お二人の抱負に瑞々しい未来を感じたひと時でした。

(文:土田)

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