レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

柏餅を包むのはカシワの葉?

ちょっと時期を逸した感があるけど、端午の節句を過ぎると、柏餅をよく食べるようになるよね。みんなはもう今年お初の柏餅を食べたのかな?
柏餅を包むのはカシワの葉①柏餅 柏餅
ところで、この柏餅、かしわもちと言うくらいだから、餅を包んでいる葉はカシワの葉だってことは知ってるよね。えっ、それは知ってるけど、カシワっていう植物を知らないって?
柏餅を包むのはカシワの葉②カシワの葉 カシワの葉
柏餅を包むのはカシワの葉④カシワのドングリ カシワのドングリ
カシワっていう木は、北海道から九州まで全国に自生しているドングリの仲間なんだけど、関西では、山であんまり見かけることはないよね。しかも、庭木や街路樹としても使わないから、みんなが知らないのも無理はないかな。
柏餅を包むのはカシワの葉③カシワの樹形 カシワの樹形

さて、カシワっていう名前だけど、これは、古代に、大きな葉を土器などの底に敷いて、食べ物を炊いたり蒸したりしたところから、つけられたようなんだ。「炊ぐ葉(かしぐは)」が転じて、「かしは」になり、「カシワ」と呼ぶようになったんだよ。もちろん昔は今のカシワの木の葉だけではなく、大きな葉をいろいろと利用していたらしく、たとえば、ホオノキの葉なんかもよく使われていたようだよ。ホオノキは昔ホホカシハと呼ばれていたこともあるくらいだからね。
最近は、都市部では柏餅を家でつくる人は少なくなったけど、地方に行けば今でもよくつくられているよね。関西では近くの山でカシワの葉が手に入りにくいもんだから、カシワを使うことが少なくて、その代用として里山にたくさん生えているサルトリイバラの葉を使うことが多いよね。
柏餅を包むのはカシワの葉⑤サンキライの葉を使った柏餅 サルトリイバラの葉を使った柏餅
サルトリイバラは、関西ではサンキライ(山帰来)と呼ばれていて、表面がツルツル、テカテカしていて粘っこい餅を包むのにはもってこいの葉だよね。でも、鋭いとげがあるので、葉を採るときは十分に気をつけるんだぞ!
柏餅を包むのはカシワの葉⑥サンキライの葉と果実 サルトリイバラの葉と果実

ところで、五月五日の端午の節句に柏餅を食べる習慣は、カシワの木の葉が秋に紅葉して枯れても、枝から落ちずに冬中残っていて、翌春に新芽が育つまで葉が落ちないことから、家系が途切れないと縁起を担いだんだってさ。
ちなみに、名古屋以西では、鶏肉のことを「かしわ」って呼んでるよね。これは、鶏の羽の色がカシワの木の紅葉の色(赤茶色)に似ているから、そう呼ばれるようになったんだってさ。でも、最近の若い人は「かしわ」っていう言葉を知らないかもね。

バニラの香り

子供の頃、台所にあった小さな茶色い薬瓶、その中の液体がこの世のものとは思えないほど、とろけるような甘い香りを発していたので、子供心に何とかその液体の味を確かめてみたいものだと、母親の目を盗んでちょっと舐めてみた。その瞬間、ビリッと舌の先に刺激を感じたかと思うと、凄い苦みが口の中に広がった。それと同時に鼻に抜けていく甘い香り。何だこれは! 香りと味のこの大きな落差!
みんなの中には、子供の頃のこんな思い出を持っている人も多いんじゃないかな。そう、この甘い香りの正体はバニラエッセンスだったんだね。

バニラという香料は、最近でこそバニラビーンズそのものが、菓子材料店などで売られるようになったことから、知ってる人は多いだろうけど、じゃあ、バニラという植物はどんなものか知っている人はまだまだ少ないみたいだね。

バニラの香り①バニラの花  バニラの花
バニラは、中米に自生するラン科バニラ属に属する蔓性植物で、現地では数十メートルにも生長するんだぞ。蘭の仲間では最も名の売れている植物だろうね。カトレヤやシンビジュームを知らない人はいても、バニラを知らない人はいないだろうからね。最近では観葉植物として出回っていることもあるぞ。ただ、バニラが蘭の仲間だってことを知ってる人は少ないだろうけどね。

バニラの香り②バニラの栽培風景 バニラの栽培風景
バニラは、現在はマダガスカル、インドネシア、メキシコなど世界各地の熱帯地域で栽培されているんだ。花のあとにできる莢状の果実を発酵させてできるのがバニラビーンズで、日本にはこのバニラビーンズの形で輸入されているんだよ。
バニラの香り③バニラの未熟果 バニラの未熟果

バニラビーンズを縦半分に割ってみると、中心部に黒い小さな粒々が密集しているよね。これが発酵したバニラの種子なんだけど、ケシ粒よりも小さくて発酵前ならフッと吹けば飛んでしまうほど小さいんだ。この発酵した種子に含まれるバニリンと言う化学物質が香りの正体。これを香料としてアイスクリームやカスタードクリーム、ケーキ等に使っているんだ。最近では人工的に合成されたバニリンを使うことも多いけど、クリームの中に黒い粒々が見えるものは、本当のバニラを使っている証拠だね
バニラの香り④発酵済のバニラビーンズ 発酵済のバニラビーンズ

スミレ~花が咲かないのに種ができる~

日本の春の野草の代表と言えば、そう、やっぱりスミレだろうね。さすがにスミレを知らない人はいないよね。
すみれ①スミレ スミレ
さてこのスミレ、日本国内に自生している種類だけでも、亜種や変種を含めると250もあるんだよ。スミレ類は、今進化の真っ最中で、地域ごとに少しずつ変化しているんだよ。
すみれ②エイザンスミレ エイザンスミレ
すみれ③オオバキスミレ オオバキスミレ
すみれ④タチツボスミレ タチツボスミレ

ところで、みんなはスミレを観察してて不思議に思ったことはないかい? スミレは春先に紫色や黄色の花を咲かせるけど、花が咲いている時期はせいぜい2週間ほど。でも、そのあとにできる果実は初夏頃まで次々と生まれてきて、種を飛ばしているんだよ。これに気付いたそこのあなた、なかなか観察眼が鋭いね。でも、どうして次々に実が成るのかって?

では、種明かしといこうか。実はスミレの仲間は花が咲く花と咲かない花の2種類があるんだ。春先に最初に咲くいくつかは普通に花を咲かせる花で、その花が咲き終わると花が咲かない花が次々と生まれてくるんだ。じゃあ、花の咲かない花って言うのはどんなのかって? 株元から小さな蕾が立ち上がってきて、そろそろ咲く頃かなって思っていると、実が大きくなり始めるんだ。この花が咲かない花を「閉鎖花(へいさか)」と呼んでいて、花びらが全くないんだ。蕾のままで、雄しべから花粉を出して雌しべの先に受粉して、受精が完了。すぐに実が大きくなってくるんだ。だから、確かに蕾が次々と上がってきているのに、花が全然咲かなくて、いつの間にか実がたくさんできているってことになるんだね。
すみれ⑦閉鎖花 閉鎖花
すみれ⑤スミレの果実 スミレの果実
本来は、花を咲かせて、昆虫たちが花粉を媒介して受精し、実が成って種ができるという道筋を通るんだけど、たくさん子孫を増やすためには、それだけではなかなか間になわないんだね。そこで考えついたのが、昆虫たちに頼ることなく、自分自身で受精して(自家受粉)、種をどんどん生産することなんだ。普通の花が終わったあとに、初夏ぐらいまで次々と「閉鎖花」を生み出して、種をどんどん生産することにより子孫を増やそうとしているんだね。

ところで、スミレの実が熟すると、縦に三つに割れて中にある種を周辺に飛ばすのは知っているよね。その種をよく見ると、端っこに白いねばねばとしたものが付いているのが分かると思うよ。これはエライオソームといって、アリの好む糖分が含まれているので、アリはこれを見つけると自分の巣まで運んでいくんだよ。 そう、スミレはアリを巧く使って、種を遠くに移動させているんだぞ。どうだい、なかなか頭が良いだろう?
すみれ⑧果実が熟して3つに割れたところ 果実が熟して3つに割れたところ
すみれ⑥種子(白いエライオソーム)  種子(白いエライオソーム)