レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

朝顔、昼顔、夕顔、夜顔、仲間はずれはどれ?

鬱陶しかった梅雨も明けて、いよいよ本格的な夏の到来! 夏の花と言えば、誰しもが思い浮かべるのは朝顔だね! 朝早くから咲くので朝顔。それに対してお昼頃に咲くから昼顔、夕方咲くから夕顔、そして夜に咲くから夜顔って、昔の人はうまく名前をつけたもんだね。
じゃあ、ここでクイズ! 朝顔、昼顔、夕顔、夜顔のうち、仲間はずれはどれ? 正解は後ほどということにして、まずはこの四つの花を見比べてみよう。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔①アサガオ(朝顔)  アサガオ(朝顔)
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔②ヒルガオ(昼顔) ヒルガオ(昼顔)
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔③ユウガオ(夕顔) ユウガオ(夕顔)
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔④ヨルガオ(夜顔) ヨルガオ(夜顔)
どうだい、観察眼の鋭いみんなはもう分かっただろう? 花はどれも丸い形をしているけど、ユウガオだけが花びらに切れ込みがあるよね。 ということで、仲間はずれは夕顔が正解。あれっ、みんなにはちょっと簡単すぎたかな?
夕顔以外の3種はいずれも、分類学上はヒルガオ科に属する草本で、なかでも朝顔はサツマイモと同じサツマイモ属に属してるんだよ。サツマイモの花も小さな朝顔みたいだろう? えっ、見たことないって? じゃあ、写真を載せておくから、よ~く覚えておくんだぞ。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔⑧サツマイモの花 サツマイモの花

話が横道にそれちゃったけど、じゃあ、仲間はずれの夕顔は何の仲間か分かるかな? 夕顔は花を観賞するのではなくて、その果実を食用として利用しているんだぞ。みんなも時々食べてると思うよ。
では、種明かしをしようか。夕顔は、分類学上ウリ科に属していて、花の後には大きな実を付けるんだ。その実が未熟なうちに収穫して、表面の皮を剥いたあと、果肉部分を薄く細く剥いていき、それを乾燥させたものが・・・・・、そう「かんぴょう」だね。最近では巻き寿司の具材くらいしか使わなくなっていて、若い人のなかには、かんぴょうを知らない人もいるらしいぞ。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔⑤ユウガオの果実 ユウガオの果実
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔⑥かんぴょう かんぴょう
我々の世代には、甘く炊いた茶色いかんぴょうの入っていない巻き寿司は考えられないよね。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔⑦かんぴょうの入った巻き寿司 かんぴょうの入った巻きずし

 

夜に眠る合歓木

梅雨も終わりを迎える頃、夕方になると大きく広げた葉の上に薄紅色の刷毛のような妖艶な花を咲かせるネムノキ。 そう、タイトルの合歓木はネムノキと読むんだぞ。
夜に眠る合歓木①ネムノキの花 ネムノキの花

ネムノキはどうしてネムノキと言われるようになったのかは、みんなくらいになるともう知っているはずだな。そう、夜になると綺麗に葉を折りたたんで、眠ったようになってしまうから、「眠りの木」転じてネムノキとなったんだな。
夜に眠る合歓木④夜に閉じた葉 夜に閉じた葉

じゃあ、どうして「眠の木」ではなくて、「合歓木」と漢字で書くのかな? これを知っている人はなかなかのものだぞ。この名前は、元々中国での呼び名で、夜になって葉を綺麗に合わせることから、男女が夜に共寝をすることになぞらえて、それを意味する言葉「合歓」が使われたようなんだ。漢字は中国から、名前は日本語からきていて、昔の人がそれをくっつけてしまったわけさ。
このように、植物の名前には、中国語の言葉、すなわち漢語に日本語の読みを当てたものが結構たくさんあるんだぞ。たとえば、杜若(カキツバタ)、菖蒲(アヤメ)、紫陽花(アジサイ)、向日葵(ヒマワリ)、薔薇(バラ)などなど、挙げると切りがないぞ。 昔はそれだけ漢語の影響が大きかったってことだね。

さて、話を元に戻して、ネムノキの花をよく観察すると、薄紅色の細い糸のようなものがたくさん集まって刷毛のような形をしてるよね。これは実は雄しべの集まりで、5枚の花弁と萼は、長い雄しべの下の方に目立たぬようにこじんまりと佇んでるんだよ。なんと、奥ゆかしいことか!
さらに、花の後には実がなるんだけど、この実を見れば誰しも豆の莢だと思うだろう? そう思って当然で、ネムノキは分類学上マメ科に属しているんだぞ。この豆の莢は葉が落ちる冬になっても残っていて、冬の間に強い北風に飛ばされて遠くに運ばれるんだってさ。
夜に眠る合歓木③ネムノキの果実(豆の莢状) ネムノキの果実(豆の莢(さや)状)

さあ、ここから本題だけど、葉が閉じる仕組みはどうなっているかってことだけど、ネムノキの葉は小さな葉がたくさん集まって1枚の大きな葉のような形をしているだろう。このような葉を複葉といって、元は1枚の葉に多くの切れ込みが入って、細かくなっていったもので、小さい葉(これを小葉と呼ぶんだがな)が1枚の葉じゃないんだぞ。この小葉の付け根に葉沈(ようちん)と呼ばれる細胞の塊があって、それを構成する細胞の一つ一つが水分を吸ってパンパンに膨れると小葉が開き、水分が減って細胞の圧が小さくなると閉じてしまうんだ。どうだい、巧くできてるだろう?
ところで、どうして夜になると閉じるのかって? 夜には光合成をする必要がないので、葉を閉じることによって、夜に放射冷却によって葉から大気中へ輻射熱が逃げるのを防ぐためだとか、昆虫などに葉を食べられにくくしているとか、いくつか説はあるようだけど、実はその謎にはまだ結論が出ていないんだよ。
夜に眠る合歓木②ネムノキの複葉(これが一枚の葉) ネムノキの複葉(これが一枚の葉)

象潟(きさかた)や 雨に西施(せいし)が 合歓(ねぶ)の花(「奥の細道」より)

この夏は、こんな情景を思い浮かべながら、合歓の花を楽しんでみては如何?

躑躅と皐月

さあ、みんなはこのタイトルの漢字を読めるかな? えっ、馬鹿にしないでよって! ごめんごめん、はい、そのとおり、「つつじ」と「さつき」だね。
ツツジとサツキというこの2種類の花木だけど、この違いが分からないって話をよく聞くんだよ。みんなはどう思う? えぇっ、みんなもよく分からないって!? しようがないなぁ、じゃあ説明するとするか。
まず、根本的にツツジとサツキは別物ではないということ。違いが分かりにくいのは当たり前なんだよ。ツツジという名前の植物は、ざっくりと言えば、植物分類上、ツツジ科ツツジ属に属するもののうち、シャクナゲなどを除いた低木のグループのことを指していて、ツツジそのものという名前の植物はないんだよ。ここでは敢えてツツジ類と呼ぶけど、ツツジ類は主に○○ツツジという名前がつけられているのさ。

躑躅と皐月①コバノミツバツツジ  コバノミツバツツジ
躑躅と皐月②ヤマツツジ ヤマツツジ
躑躅と皐月③モチツツジ モチツツジ
春早くに、関西の里山で山桜とほぼ同時に咲き始める濃桃色のコバノミツバツツジ、それを追いかけるように咲き始める朱赤のヤマツツジ、そしてやや遅れて咲くピンク色のモチツツジなど、春から初夏にかけて野山には様々なツツジ類がみんなの目を楽しませてくれるよね。高原地帯では落葉性で樺色のレンゲツツジ、九州ではミヤマキリシマ、街中では植栽されているヒラドツツジやクルメツツジなどが華やかに咲き誇っているよね。
躑躅と皐月④レンゲツツジ レンゲツツジ
躑躅と皐月⑤ミヤマキリシマ ミヤマキリシマ
躑躅と皐月⑥ヒラドツツジ ヒラドツツジ
躑躅と皐月⑦クルメツツジ クルメツツジ

さて、そろそろ本題に入るとするか。では、サツキとは何ぞやって話だけど、実はサツキもツツジ類の一つで、日本の深山渓谷の水しぶきが掛かるような岩上に自生するサツキツツジという野生のツツジを基にして、長い年月をかけて品種改良してきたグループをサツキ(一つの種類の呼び名でない)と呼んでいるんだ。
躑躅と皐月⑧サツキツツジ サツキツツジ
ほかの多くのツツジと決定的に違うことは、花を咲かせる時期が遅いと言うこと。他のツツジ類は葉が出る前か葉が出ると同時に花を咲かせるんだけど、サツキは新芽が伸びて葉がしっかりと展開する頃、すなわち5月中旬頃~6月にかけて花を咲かせるんだよ。で、旧暦の皐月(五月)に花を咲かせるツツジ類だから、サツキツツジって呼ばれてるんだ。
躑躅と皐月⑨サツキ(大盃) サツキ(大盃)
サツキで、みんなが一番よく目にするのが、街路樹や公園、庭木として、日本中で植栽されている「大盃(おおさかづき)」と言う品種があるね。サツキは盆栽として仕立てることも多く、愛好家の間では数多くの品種が育てられているけど、みんなが目にすることができるのは、5月の下旬頃になるとあちこちで開催されるサツキ展くらいかな。たまには、サツキ展に赴いて、サツキのバラエティの多様さを観賞してくるとイイよ。
躑躅と皐月⑩サツキ盆栽 サツキ盆栽
躑躅と皐月⑪サツキ盆栽 サツキ盆栽