レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

躑躅と皐月

さあ、みんなはこのタイトルの漢字を読めるかな? えっ、馬鹿にしないでよって! ごめんごめん、はい、そのとおり、「つつじ」と「さつき」だね。
ツツジとサツキというこの2種類の花木だけど、この違いが分からないって話をよく聞くんだよ。みんなはどう思う? えぇっ、みんなもよく分からないって!? しようがないなぁ、じゃあ説明するとするか。
まず、根本的にツツジとサツキは別物ではないということ。違いが分かりにくいのは当たり前なんだよ。ツツジという名前の植物は、ざっくりと言えば、植物分類上、ツツジ科ツツジ属に属するもののうち、シャクナゲなどを除いた低木のグループのことを指していて、ツツジそのものという名前の植物はないんだよ。ここでは敢えてツツジ類と呼ぶけど、ツツジ類は主に○○ツツジという名前がつけられているのさ。

躑躅と皐月①コバノミツバツツジ  コバノミツバツツジ
躑躅と皐月②ヤマツツジ ヤマツツジ
躑躅と皐月③モチツツジ モチツツジ
春早くに、関西の里山で山桜とほぼ同時に咲き始める濃桃色のコバノミツバツツジ、それを追いかけるように咲き始める朱赤のヤマツツジ、そしてやや遅れて咲くピンク色のモチツツジなど、春から初夏にかけて野山には様々なツツジ類がみんなの目を楽しませてくれるよね。高原地帯では落葉性で樺色のレンゲツツジ、九州ではミヤマキリシマ、街中では植栽されているヒラドツツジやクルメツツジなどが華やかに咲き誇っているよね。
躑躅と皐月④レンゲツツジ レンゲツツジ
躑躅と皐月⑤ミヤマキリシマ ミヤマキリシマ
躑躅と皐月⑥ヒラドツツジ ヒラドツツジ
躑躅と皐月⑦クルメツツジ クルメツツジ

さて、そろそろ本題に入るとするか。では、サツキとは何ぞやって話だけど、実はサツキもツツジ類の一つで、日本の深山渓谷の水しぶきが掛かるような岩上に自生するサツキツツジという野生のツツジを基にして、長い年月をかけて品種改良してきたグループをサツキ(一つの種類の呼び名でない)と呼んでいるんだ。
躑躅と皐月⑧サツキツツジ サツキツツジ
ほかの多くのツツジと決定的に違うことは、花を咲かせる時期が遅いと言うこと。他のツツジ類は葉が出る前か葉が出ると同時に花を咲かせるんだけど、サツキは新芽が伸びて葉がしっかりと展開する頃、すなわち5月中旬頃~6月にかけて花を咲かせるんだよ。で、旧暦の皐月(五月)に花を咲かせるツツジ類だから、サツキツツジって呼ばれてるんだ。
躑躅と皐月⑨サツキ(大盃) サツキ(大盃)
サツキで、みんなが一番よく目にするのが、街路樹や公園、庭木として、日本中で植栽されている「大盃(おおさかづき)」と言う品種があるね。サツキは盆栽として仕立てることも多く、愛好家の間では数多くの品種が育てられているけど、みんなが目にすることができるのは、5月の下旬頃になるとあちこちで開催されるサツキ展くらいかな。たまには、サツキ展に赴いて、サツキのバラエティの多様さを観賞してくるとイイよ。
躑躅と皐月⑩サツキ盆栽 サツキ盆栽
躑躅と皐月⑪サツキ盆栽 サツキ盆栽

ウツギの仲間たち

♫ 卯の花の 匂う垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ♬
ウツギの仲間たち②ウツギの花(拡大) ウツギの花(拡大)

これはみんなもよく口ずさんだ童謡もしくは唱歌「夏は来ぬ」の一節だよね。
この冒頭に出てくる卯の花とは、もちろん、みんなもよく知っている、そう、ウツギの花だね。

ところで、ウツギという名前のついた植物がたくさんあるのを知っているかい? 代表格であるアジサイ科のウツギに加えて、同じアジサイ科のノリウツギやバイカウツギ、スイカズラ科のタニウツギやハコネウツギ、フジウツギ科のフジウツギ、ミツバウツギ科のミツバウツギ、ドクウツギ科のドクウツギ等々、挙げればきりがないほど次々と出てくるけれど、この辺で止めておくよ。
ウツギの仲間たち①ウツギ(アジサイ科) ウツギ(アジサイ科)
ウツギの仲間たち⑤ノリウツギ(アジサイ科) ノリウツギ(アジサイ科)
ウツギの仲間たち⑥バイカウツギ(アジサイ科) バイカウツギ(アジサイ科)
ウツギの仲間たち⑦タニウツギ(スイカズラ科) タニウツギ(スイカズラ科)
ウツギの仲間たち⑧ハコネウツギ(スイカズラ科) ハコネウツギ(スイカズラ科)
ウツギの仲間たち⑨フジウツギ(フジウツギ科) フジウツギ(フジウツギ科)

これらの花の名前を訊ねられたときには、「これは○○ウツギという名前なんですよ」って説明すると、まず間違いなく、「へぇ~、これもウツギの仲間なんですか? ウツギと花の形が全く違いますねぇ。」といった反応が返ってくるんだ。 そりゃあそうだよね、名前にウツギってのは付いているけど、全く血のつながりもない、親類縁者でもないもの同士なんだから、花の形が違っていて当たり前。 人はどうして、こう名前に騙されてしまうんだろうね、みんなは大丈夫かな? 人間でも、同じ名字でも赤の他人同士なんてざらにいるだろう。

じゃあ、このウツギたちはどうしてウツギと呼ばれているんだろうね。それはウツギという言葉を理解すれば簡単なこと。ウツギは漢字で書くと「空木」となるんだけど、勘のイイみんなはもう分かっただろう? そう、ウツギたちはみんな枝や幹の中心が空洞になっているのさ。そうストローのようになっているってことなんだよ。これを昔の人は空木(うつぎ)って呼んだんだね。
ウツギの仲間たち④ウツギの枝 ウツギの枝
この空洞になる特徴を利用してつくられたのが、ノリウツギの煙管(キセル)やパイプらしいんだけど、最近はほとんど作られなくなっているので、ワシも見たことはないのさ。

ウツギの仲間の中でも、特に注意しておかなくちゃならないのが、ドクウツギ。これは、トリカブト、ドクゼリと並んで、日本の3大猛毒植物の一つといわれており、この実を食べるとイチコロであの世行きだから、十分気をつけるようにな!
ウツギの仲間たち⑩ドクウツギ(ドクウツギ科) ドクウツギ(ドクウツギ科)
ちなみに、旧暦の4月を卯月っていうんだけど、これはウツギの別名である卯の花の咲く月だから、そう呼ばれるようになったんだってさ。
ウツギの仲間たち③ウツギの樹形 ウツギの樹形

朴葉味噌の朴葉とは?

みんなは、高山で有名な岐阜県の飛騨地方に行ったことはあるかなぁ?そこで旅館に宿泊すると、必ずと言っていいほど朝食に「朴葉味噌(ほおばみそ)」出てくるんだ。七輪の上に朴葉を乗せて、その上で自家製の味噌にネギや椎茸などの薬味を入れて混ぜながら焼くんだけど、これを炊きたてのご飯に乗せていただくと美味しいよねぇ。朝からいくらでもご飯が進むんだ。あ~っ、食べてくなってきたよ! いゃ~、申し訳ない、ちょっと脱線してしまったよ。
朴葉味噌の朴葉とは④朴葉味噌 朴葉味噌

さあ、本題に戻って、朴葉味噌に使われる朴葉とは、もちろんホオノキの葉なんだけど、みんなはホオノキを見たことがあるかな? ホオノキは、北海道から九州までの低山から高山地帯にまで、幅広く分布していて、六甲山系にもよく生えているので、みんなもよく目にしているはずなんだけどね。
朴葉味噌の朴葉とは①ホオノキの葉 ホウノキの葉
木の高さが30mにもなる非常に大きな落葉広葉樹で、葉も大きいけど、花も大きくて5月から6月にかけて、木の高いところの枝先に直径20cmほどのクリーム色をした大きな花を咲かせるんだ。
朴葉味噌の朴葉とは②ホウノキの花(下から見上げたもの) ホオノキの花(下から見上げたもの)
朴葉味噌の朴葉とは⑤ホオノキの花 ホオノキの花
なかなか花を間近に見ることは少ないけど、遠くから山を眺めると、大きな白い花が樹冠に点々と咲いているのを見かけることがあるよ。ホオノキは花を見てわかった人もいるだろうけど、モクレンの仲間なんだ。花もタイサンボクに似ているだろう? 花は大きくて綺麗なんだけど、何せ高いところで咲くもんだからねぇ。しかも、庭木にするには大きくなりすぎるし・・・・・。
ホオノキの葉は、大きいものでは長さが30~50cmにもなるんだけど、古代から食べ物を包んだり、調理する際に使われてきたんだ。前回のカシワの時にも話したけど、昔は「炊ぐ葉(かしぐは)」すなわち「かしは」として。この大きな葉が重宝されていたんだね。だから、昔は「ホホカシハ」と呼ばれていたようだよ。
朴葉味噌には枯れて茶色くなった葉を使うんだけど、これは落ち葉を塩漬けにして乾燥したものが火に強くて、七輪の上で焼くのに適しているからで、朴葉寿司などは、殺菌作用があるといわれている緑の若葉を使っているんだぞ。
朴葉味噌の朴葉とは③ホオノキの枯葉 ホオノキの枯葉
みんなも山歩きで見つけたら、葉を何枚か採ってきて、料理や盛付けに使うと家族に褒められるかもね。