レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

萱草(かんぞう)、忘れ草(わすれぐさ)、ヘメロカリス

ニッコウキスゲ、ヤブカンゾウにノカンゾウ、そしてユウスゲ。これらは、みんな分類学上ワスレグサ属に属する親戚たちなんだ。高原や湿原に大群落をつくるニッコウキスゲ、みんなもよく知っているよね。平地の草原や河原、田んぼの畦などにも咲いているノカンゾウにヤブカンゾウ、そして夕刻から馥郁とした香りを漂わせるユウスゲ。どれもみんな捨てがたい魅力を持った夏の花だねぇ。
萱草、忘れ草、ヘメロカリス①ノカンゾウ サイズ小 ノカンゾウ
萱草、忘れ草、ヘメロカリス②ヤブカンゾウ(必ず八重咲き)サイズ小 ヤブカンゾウ(必ず八重咲き)
萱草、忘れ草、ヘメロカリス③ユウスゲ ユウスゲ
萱草、忘れ草、ヘメロカリス④ニッコウキスゲ ニッコウキスゲ
ワスレグサ属の植物たちは、日本を中心として、朝鮮半島や中国大陸などの東アジアに自生し、古くから人間に利用されてきたんだ。今では、これらを基にして育成された豪華で大きな花を付ける園芸品種たちが「ヘメロカリス」っていう名前で、出回っているよね。ヘメロカリスっていう宿根草は知っているだろう? 暑さや寒さ、乾燥にも強くて、非常に丈夫で育てやすく、日当たりさえ良いところに植えておけば、放っておいても毎年必ず綺麗な花を咲かせてくれる。ずぼらな園芸家にとって、なんて便利な植物なんだろう!!
しかも、野山に生えているノカンゾウやヤブカンゾウの新芽は、山菜としても人気で、さっと湯がいて酢味噌和えにしたら、シャキシャキとした歯ごたえで最高だぞ!! もちろんサラダでも食べられるから、みんなも春先に摘みに行けばいいよ。
萱草、忘れ草、ヘメロカリス⑤ノカンゾウの新芽 ノカンゾウの新芽

ワスレグサという名前は、これらの花が一日しか咲かないからなんだ。ほとんどのものは朝咲いて夕方には萎む、ユウスゲのように夕方咲いて明け方に萎むのもあるけどね。どちらにしても一日花。一日限りで終わる花だから忘れ草という名前になったんだってさ。英語ではDay Lily これも訳せば「一日の百合」ってことになるんだね。
さて、ワスレグサの仲間は、特にアメリカで非常に人気があり、古くから品種改良が進められてきたんだ。それらが日本に里帰りしたのが「ヘメロカリス」って呼ばれている宿根草だね。写真を見れば分かるように、非常に豪華で華やかな花に改良されていて、我々日本人には、ちょっと豪華過ぎてくどい感もなきにしもあらずってとこかな。とはいえ、本来の丈夫な性質は変わっていないから、庭に植えっぱなしにしておくにはもってこいの宿根草だぞ。
ちなみに、このワスレグサは、わすれな草(勿忘草)とは一切関係がないからそのつもりでな。
萱草、忘れ草、ヘメロカリス⑥ヘメロカリス(園芸種) ヘメロカリス(園芸品種)
萱草、忘れ草、ヘメロカリス⑦ヘメロカリス(園芸種) ヘメロカリス(園芸品種)
萱草、忘れ草、ヘメロカリス⑧ヘメロカリス(園芸種) ヘメロカリス(園芸品種)
萱草、忘れ草、ヘメロカリス⑨ヘメロカリス(園芸種) ヘメロカリス(園芸品種)
萱草、忘れ草、ヘメロカリス⑩ヘメロカリス(園芸種) ヘメロカリス(園芸品種)
萱草、忘れ草、ヘメロカリス⑪ヘメロカリス(園芸種) ヘメロカリス(園芸品種)

 

朝顔、昼顔、夕顔、夜顔、仲間はずれはどれ?

鬱陶しかった梅雨も明けて、いよいよ本格的な夏の到来! 夏の花と言えば、誰しもが思い浮かべるのは朝顔だね! 朝早くから咲くので朝顔。それに対してお昼頃に咲くから昼顔、夕方咲くから夕顔、そして夜に咲くから夜顔って、昔の人はうまく名前をつけたもんだね。
じゃあ、ここでクイズ! 朝顔、昼顔、夕顔、夜顔のうち、仲間はずれはどれ? 正解は後ほどということにして、まずはこの四つの花を見比べてみよう。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔①アサガオ(朝顔)  アサガオ(朝顔)
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔②ヒルガオ(昼顔) ヒルガオ(昼顔)
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔③ユウガオ(夕顔) ユウガオ(夕顔)
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔④ヨルガオ(夜顔) ヨルガオ(夜顔)
どうだい、観察眼の鋭いみんなはもう分かっただろう? 花はどれも丸い形をしているけど、ユウガオだけが花びらに切れ込みがあるよね。 ということで、仲間はずれは夕顔が正解。あれっ、みんなにはちょっと簡単すぎたかな?
夕顔以外の3種はいずれも、分類学上はヒルガオ科に属する草本で、なかでも朝顔はサツマイモと同じサツマイモ属に属してるんだよ。サツマイモの花も小さな朝顔みたいだろう? えっ、見たことないって? じゃあ、写真を載せておくから、よ~く覚えておくんだぞ。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔⑧サツマイモの花 サツマイモの花

話が横道にそれちゃったけど、じゃあ、仲間はずれの夕顔は何の仲間か分かるかな? 夕顔は花を観賞するのではなくて、その果実を食用として利用しているんだぞ。みんなも時々食べてると思うよ。
では、種明かしをしようか。夕顔は、分類学上ウリ科に属していて、花の後には大きな実を付けるんだ。その実が未熟なうちに収穫して、表面の皮を剥いたあと、果肉部分を薄く細く剥いていき、それを乾燥させたものが・・・・・、そう「かんぴょう」だね。最近では巻き寿司の具材くらいしか使わなくなっていて、若い人のなかには、かんぴょうを知らない人もいるらしいぞ。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔⑤ユウガオの果実 ユウガオの果実
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔⑥かんぴょう かんぴょう
我々の世代には、甘く炊いた茶色いかんぴょうの入っていない巻き寿司は考えられないよね。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔⑦かんぴょうの入った巻き寿司 かんぴょうの入った巻きずし

 

夜に眠る合歓木

梅雨も終わりを迎える頃、夕方になると大きく広げた葉の上に薄紅色の刷毛のような妖艶な花を咲かせるネムノキ。 そう、タイトルの合歓木はネムノキと読むんだぞ。
夜に眠る合歓木①ネムノキの花 ネムノキの花

ネムノキはどうしてネムノキと言われるようになったのかは、みんなくらいになるともう知っているはずだな。そう、夜になると綺麗に葉を折りたたんで、眠ったようになってしまうから、「眠りの木」転じてネムノキとなったんだな。
夜に眠る合歓木④夜に閉じた葉 夜に閉じた葉

じゃあ、どうして「眠の木」ではなくて、「合歓木」と漢字で書くのかな? これを知っている人はなかなかのものだぞ。この名前は、元々中国での呼び名で、夜になって葉を綺麗に合わせることから、男女が夜に共寝をすることになぞらえて、それを意味する言葉「合歓」が使われたようなんだ。漢字は中国から、名前は日本語からきていて、昔の人がそれをくっつけてしまったわけさ。
このように、植物の名前には、中国語の言葉、すなわち漢語に日本語の読みを当てたものが結構たくさんあるんだぞ。たとえば、杜若(カキツバタ)、菖蒲(アヤメ)、紫陽花(アジサイ)、向日葵(ヒマワリ)、薔薇(バラ)などなど、挙げると切りがないぞ。 昔はそれだけ漢語の影響が大きかったってことだね。

さて、話を元に戻して、ネムノキの花をよく観察すると、薄紅色の細い糸のようなものがたくさん集まって刷毛のような形をしてるよね。これは実は雄しべの集まりで、5枚の花弁と萼は、長い雄しべの下の方に目立たぬようにこじんまりと佇んでるんだよ。なんと、奥ゆかしいことか!
さらに、花の後には実がなるんだけど、この実を見れば誰しも豆の莢だと思うだろう? そう思って当然で、ネムノキは分類学上マメ科に属しているんだぞ。この豆の莢は葉が落ちる冬になっても残っていて、冬の間に強い北風に飛ばされて遠くに運ばれるんだってさ。
夜に眠る合歓木③ネムノキの果実(豆の莢状) ネムノキの果実(豆の莢(さや)状)

さあ、ここから本題だけど、葉が閉じる仕組みはどうなっているかってことだけど、ネムノキの葉は小さな葉がたくさん集まって1枚の大きな葉のような形をしているだろう。このような葉を複葉といって、元は1枚の葉に多くの切れ込みが入って、細かくなっていったもので、小さい葉(これを小葉と呼ぶんだがな)が1枚の葉じゃないんだぞ。この小葉の付け根に葉沈(ようちん)と呼ばれる細胞の塊があって、それを構成する細胞の一つ一つが水分を吸ってパンパンに膨れると小葉が開き、水分が減って細胞の圧が小さくなると閉じてしまうんだ。どうだい、巧くできてるだろう?
ところで、どうして夜になると閉じるのかって? 夜には光合成をする必要がないので、葉を閉じることによって、夜に放射冷却によって葉から大気中へ輻射熱が逃げるのを防ぐためだとか、昆虫などに葉を食べられにくくしているとか、いくつか説はあるようだけど、実はその謎にはまだ結論が出ていないんだよ。
夜に眠る合歓木②ネムノキの複葉(これが一枚の葉) ネムノキの複葉(これが一枚の葉)

象潟(きさかた)や 雨に西施(せいし)が 合歓(ねぶ)の花(「奥の細道」より)

この夏は、こんな情景を思い浮かべながら、合歓の花を楽しんでみては如何?