レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

秋に咲く海棠

朝夕の風に少し秋を感じる頃になると、庭の片隅の日陰に柔らかなピンクの花を咲かせ始める秋海棠。それまでの長い暑さでくたびれていた庭がパッと明るくなるよね。皆も好きな花の一つじゃないかな?
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さて、この秋海棠って花は、皆もよく知っているとおり、ベゴニアの仲間なんだな。ベゴニアと言えば、花壇によく使われる1年草のセンパフローレンス、花が豪華で見事だけど、高温と低温に弱くてなかなか素人には育てにくい球根ベゴニア、茎が堅くて背が高くなる木立性ベゴニア、レックスに代表される葉に表面に美しい文様がある根茎ベゴニア、それに年末の鉢物として出回るようになったエラチオールベゴニアなどなど、ベゴニアと一口では言えないほど変化に富んだ植物だよね。
このように多種多様なベゴニアの中で唯一、寒さに強くて庭植えで育てられるベゴニアがシュウカイドウ(秋海棠)なんだよ。

シュウカイドウは中国南部からマレー半島に自生しており、日本には江戸時代初期に園芸植物として導入されたようなんだ。秋海棠という名前は中国名の日本語読みで、春に咲く海棠の花色に似た花が秋に咲くことから名付けられたんだ。
ところで、「秋海棠西瓜の色に咲きにけり」と言う松尾芭蕉の句があるのを知ってるかい? この句の意味は、「秋口に秋海棠の花が西瓜の実ような紅色の花を咲かせているよ」っていうことで、上っ面を読むとそのままの意味なんだけど、実はこれには深い意味があるんだぞ。
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じつは、この句が詠まれたのは1690年頃らしいんだけど、秋海棠は1630年頃に、アフリカ原産の西瓜も1650年頃に中国から導入されたと言われているから、海外から導入された舶来の植物同士を、いかにも古くからある日本の植物のように、俳句に詠み込んだ芭蕉のセンスの良さが伺われるね。

さて、話は変わって、秋海棠はもちろんベゴニア全般に、有毒植物だって言うことは知っているかい? 秋海棠を含むベゴニアの仲間には、植物体全体、特に茎にシュウ酸という成分を含んでいて、舐めると酸っぱいんだけど、大量に摂取すると、体内のカルシウムと結合して低カルシウム血症をおこし、痙攣、昏睡、最悪死亡することもあるそうだぞ。シュウカイドウの茎には約1%のシュウ酸が含まれていて、シュウ酸の致死量が15~30gだから、1.5kgもの茎を食べたら命が危ないことになるけどね(公益財団法人日本中毒情報センター)。ついでに言っておくと、野山に生えているギシギシやスイバ、イタドリ、庭の雑草として有名なカタバミにもシュウ酸が含まれているから注意するんだぞ。
あっ、それからシュウ酸はホウレンソウにも含まれているからな(湯がくことにより、シュウ酸がお湯に溶け出すので、それほど気にすることはないぞ。
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月見草と待宵草、それに宵待草

月見草っていう名前は誰しも聞いたことがあるよね。花に興味のない人でも、どんな花か知らないけど、何となく風情のある名前だなぁってくらいは思っているかな。

このツキミソウって花は、アカバナ科マツヨイグサ属に属するメキシコ原産の一年生草本で、江戸時代の末期に観賞用として日本に入ってきたんだ。ところで、月見草の花は何色か知っているかい? えっ、黄色だって!? Boooooo! 確かにマツヨイグサの仲間は夕方から夜に咲く黄色い花が多いいんだけど、ツキミソウは白い花を付けるんだぞ。もちろん、月見草っていうくらいだから、夕方から咲き始めて翌朝には萎んでしまうんだけど、萎む頃には花びらはピンク色に染まっているんだ。
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ツキミソウが導入された時期に相前後して、他のマツヨイグサの仲間、マツヨイグサ、オオマツヨイグサ、メマツヨイグサなど数種類の仲間たちも導入され、新天地に来たツキミソウは他の仲間たちとの生存競争に負けてしまったんだよ(マツヨイグサ属はすべて南北アメリカ大陸が原産地で、日本には元々なかった植物だぞ)。今では、野生のツキミソウを見ること事態が非常に珍しくなっているんだ。だから、戦後~昭和30年代頃まで、日本中の空き地に大群落を作っていたマツヨイグサやオオマツヨイグサが、ツキミソウに代わって月見草と呼ばれるようになったみたいなんだ。(そのオオマツヨイグサも、今ではセイタカアワダチソウに取って代わられているけどね)。
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ちなみに、竹久夢二の「宵待草(よいまちぐさ)」っていう詩は、最初は「待宵草(まつよいぐさ)」と本人の自筆で書かれていたようだけど、語感の良さから夢二本人が途中から「宵待草(よいまちぐさ)」と書き換えたらしいぞ。でも、それにメロディーがついて大ヒットしたもんだから、「宵待草」という呼び名も大正~昭和の始め頃までは、メジャーになっていたみたいなんだ。でも、最近は聞かなくなったよね。

♬待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬそうな♬

あっ、早速口ずさんでるな! どうだい、懐かしいだろう?

さて、マツヨイグサの仲間には昼咲きのものもあって、その代表格がヒルザキツキミソウと呼ばれるピンクの花を咲かせる宿根草だね。一度植えておけば、大した世話をしなくても、初夏から夏にかけて爽やかなピンクの大きな花を咲かせ続けるので、先の園芸ブームの頃から結構人気があるんだ。みんなの中にも庭に植えている人がいるだろう?
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最近では見なくなったツキミソウ、みんなも探してみてごらん!

おはぎとぼたもち

「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」
(はぎのはな おばな くずばな なでしこのはな おみなえし またふじばかま あさがおのはな)

今回も、山上憶良が詠んだ秋の七草の歌から始めたんだけど、この歌の突破しに出てくる萩の花は、もちろんみんなよく知っているよね。前回の葛の花に比べれば、この時期になるとあちこちの公園やお寺などで「萩祭り」なるものも催されるしね。
おはぎとぼたもち③ハギの樹姿  ハギの花

ハギはマメ科に属する落葉低木だけど、年々幹が大きく太くなることはなく、その年に根際から出た枝は木質化するんだけど、冬には地際近くまで枯れてしまうので、毎年地際から新しい枝を伸ばすことになるんだ。だから、萩を栽培するときは冬に枯れた枝を地際まで刈り込むことが必要なんだぞ。
おはぎとぼたもち②ハギの花の拡大 ハギの花の拡大

さて、それじゃあ、今回もみんなの大好きな食べ物から攻めてみようかな。萩にまつわる食べ物と言えば・・・・・そう、誰しも思い浮かぶのは「おはぎ」だね。「おはぎ」は「御萩」という意味で、萩の花の咲く秋の彼岸に食べる小豆の餡で包んだお餅のことを言うんだ。人によっては、または地域によっては、つぶ餡かこし餡か、または中入れるお餅は完全に搗いた餅か、それとも粒々感を残した半搗きかなど、異論もあるだろうけど、秋の彼岸に食べるのは「おはぎ」なんだ。それじゃあ、春の彼岸に食べるのは? そうそのとおり! 「ぼたもち」だね。ぼたもちは、漢字で書くと「牡丹餅」で、牡丹の花の咲く頃に食べるので牡丹餅と呼ばれるようなったんだ。

「おはぎ」も「ぼたもち」も基本的には一緒なんだけど、昔は小豆の収穫後、マメの皮が柔らかいうちに作る「おはぎ」にはつぶ餡を、翌春になってマメの皮が固くなってきたときに作る「ぼたもち」には、皮を取り除いたこし餡を使うのが一般的だったようだけど、今はマメの保存技術が発達したので、いつでも美味しいつぶ餡を作れるんだ。
いずれにしても、餡餅に季節の花の名前を付けるなんて、昔の人のセンスもなかなか洒落てていいよね!

話のついでに、秋が「おはぎ」で春が「ぼたもち」なら、夏と冬は? 実は、夏と冬にも別の呼び名があるんだぞ。おはぎは基本的に半搗きの餅米を使うことから、餅搗きをせずに捏ねるだけだよね。だから、餅を搗いている音がしないので周りには作っていることが分からないんだよ。さて、夜に船着き場に着いた船は、周りが暗いので着いたことが分からないだろう。おはぎも搗いたことが分からないので、そのことをかけて夏のおはぎを「夜船(よふね)」と言うんだ。また、冬に家の北側の窓から空を見上げても、お月さんは見えないよね。このことから、北側の窓には月がないことと、おはぎの搗きがないのをかけて、冬のおはぎを「北窓(きたまど)」というんだぞ。どうだい、なかなか洒落てるだろう?
おはぎとぼたもち①ハギの花 ハギの樹姿

もう一つついでに、萩という名前は、毎年、春になると株元から新芽が生えてくることから、「生芽(はえき)」が訛って「はぎ」となったという説が有力みたいなんだ。ちなみに、『万葉集』では「芽子」と表記して「はぎ」と読ませているんだってさ。