レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

これは花弁?、萼弁?、それとも苞?(その①)

これまでも我が輩の話の中で、花びらだと思っていたら萼だったとか、苞だったとかっていうのが何度か出てきたことを覚えてるかな。今回は、この辺の話をあらためて勉強してもらおうと思ってな。
さて、この話をする前に、まず、植物の基本をしっかりと復習してもらおうかな。植物の体はすべて、葉と茎と根の3つの部分からできているんだ。こういうと、すぐに、じゃあ、花はどうなの?っていう質問がすぐに飛んでくるんだな。まあまあ、そんなに慌てなさんな。
    花の構造

では、その質問から答えるとするかな。一見して見るからに葉、茎、根以外の部分というのは、実はこの3つのどれかが形や色を変化させているだけなんだぞ。この中で、最も変化が大きくて、かつその種類が多いのが葉なんだ。
では、その変化の種類を書き出してみると、

葉:花弁、萼弁、雄しべ、雌しべ、子房、苞、巻きひげ、吸盤、刺など
茎:刺、蔓、ランナー、塊茎、球茎、根茎など
根:気根、呼吸根、支柱根、板根など

どうだい、茎や根が変化したものは、何となくそれらしいものばかりだけど、葉が変化したものは、雄しべや雌しべ巻きひげに吸盤、さらには刺など、その形からは想像も付かないものもあるだろう?
さらにもっと言えば、花は花柄以外はすべて葉が変化したものってことさ。だから花を構成している各部分のことを、専門用語で花葉(かよう)って言うんだぞ。さあ、それでは実際の変化を写真で見てみようか。

ヤブガラシの巻きひげ(葉が変化)

ツタの吸盤(葉が変化)

サボテンの刺(葉が変化)

バラの刺(茎の表皮が変化)

イチゴのランナー(茎が変化)

グラジオラスの球茎(茎が変化)

ショウガの根茎(茎が変化)

ラクウショウの呼吸根(根が変化)

支柱根(根が変化)

板根(根が変化)

いろいろに変化した葉や茎や根を見てきたけど、どうだい、なかなかの変身ぶりだろう?
じゃあ、続きは次回、葉が変化した花がさらに変化していく実態を見てみようか。

お正月と言えば黒豆 その②

さて、前回に引き続いて、黒豆の話の第2弾。 農家の皆さんが手塩にかけて苦労して作った丹波黒大豆。 真っ黒な極大粒で、まん丸で表面に白い粉を纏っていて、まるで芸術作品。 「黒いダイヤ」って呼ばれるのも無理はないよね。ところで、黒大豆に限らず、豆類の中では珍しく大豆は丸い球形をしているよね。でも、水で戻すとラグビーボールのような楕円形になるよな。どうして大きな球形にならないのかって? 折角だから、種明かしをしよう。
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まず、君たちが根本的に間違っているのは、どうして丸い豆を水に戻すと楕円形になるのかって考えてるところ。 みんなは枝豆をよく食べるよね。しかも、枝豆は大豆の未熟な種子だってことも知ってるよね。そうしたら、枝豆の粒の形は? もちろん楕円形だよね。さあ、間違いが分かったかな? そう、丸いのが楕円になるのではなく、もともと楕円形だったのが、水分を吸収して元の形に戻っただけなんだよ。じゃあ、どうして大豆は乾燥して種子になると丸く球形になるのかって? 引続いて種明かしをしよう。
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植物の種子というものは、繁殖のための手段であることに違いはないけど、発芽に適した環境に巡り会うまでは、乾燥や低温・高温などの過酷な環境に耐えなくてはならないんだ。そのために最も適した形というのが球形なんだぞ。物質の体積に対して最も表面積が小さい形が球形だってことは知ってるかな? 表面積が小さいってことはそれだけ周りの環境に影響されにくいってこと。だから植物の種子は球形が多いんだぞ。 分かったかな?
乾燥したときと水分を含んだときの形の違いは、種子を構成する細胞の収縮度合いの違いによるもので、一般に豆の「へそ」と呼ばれている部分が収縮率が周りの細胞より小さいので、その部分が水分を含んでもあまり膨張しないことから、結果として楕円形になってしまうのさ。

ところで、大豆は「畑のお肉」と呼ばれるほどタンパク質の含有量が多いんだけど、炭水化物(でんぷんや糖)を多く含んでいる豆類の中では珍しいよね。しかも、タンパク質だけでなく、脂質も多く含んでいるから、世界的には大豆油を搾油するために大量に栽培されているんだ。
植物学的に見ると、マメ科の植物は根に根粒という組織を持っているものがあり、大豆もその一つなんだ。根粒とは、根粒菌という細菌が共生している組織で、根粒菌は植物から栄養分を提供してもらう代わりに、大気中の窒素を植物にとって使いやすいアンモニアに転換(これを窒素固定という)するんだ。
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窒素は植物にとって必須元素で、肥料の成分としても知られているよね。空気中には豊富な窒素があるけど、それを植物が利用するには細菌か雷に頼るしかないんだよね(水田に雷が落ちると空気中の窒素が酸化されてできた窒素酸化物が水に溶けて土壌に固定され、その結果として稲が豊作になることから、雷を稲妻や稲光と言うようになったんだぞ)。その根粒菌は窒素固定の能力が高いために、それと共生する植物は自ら窒素肥料を作ることができることになり、やせている土地でも育つことができるんだ。大豆も根粒菌との共生によって十分な量の窒素分を吸収し、豊富なアミノ酸を生産でき、その結果としてその種子に他の植物では見られないような豊富なタンパク質を蓄えることができているんだ(タンパク質はアミノ酸が多数結合したもの)。 どうだい、大豆は凄い能力を持っているだろう!

さらに、大豆はそのまま食べる枝豆や、豆もやしだけでなく、加工食品の原料としても優れていて、味噌、豆腐、油揚げ、おからに高野豆腐、湯葉、醤油、豆乳、納豆、きな粉などなど、数え挙げれば切りがないほどの加工食品の原料として使われていて、もはや大豆がないと和食は成り立たないよね。いずれにしても、大豆は我々日本人にとってなくてはならない食品であり、しかも非常に優れた食品であることは間違いなく、これからも日本人の食の中心でありつづけるだろうね。
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大豆を利用した食品 ※出典:農林水産省HP

お正月と言えば黒豆 その①

師走も押し迫り、そろそろお正月の準備に向けてそわそわしてくる頃だね。このコラムを愛読してくれているみんなは、もちろんおせち料理は作るんだよえね。あれっ、なんか怪訝な顔をしている人がいるようだけど・・・・・。
まあ、兎に角、おせちに必須の料理と言えば、そう、黒豆だよね! 関西では、世界一の大粒大豆で名高い「丹波黒大豆」の煮豆が入るのが常套。まさか、丹波黒大豆を知らない人はいないだろうね。
最近では、10月に入ると枝豆としても出回っている丹波黒大豆だけど、今のあの粒の大きさになったのは意外と最近だって知ってた?
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兵庫県の丹波篠山地域では、古くからいろいろな大きさの黒大豆が作られていたんだけど、その中の特に大きい粒のものが江戸時代から重宝されていたようなんだ。でも、その大きさは今の約半分ほど、100粒で40g程度だったんだぞ。昭和の始め頃まではほぼその大きさのままで作られてきたんだけど、戦後に兵庫県の農業試験場が中心となって、その地域で最も粒の大きい種類を「丹波黒大豆」と言う品種名を付けて栽培を奨励したんだ。その後、約50年に亘って粒の大きい株から種を取り続け、選抜を繰り返していったところ、徐々に粒が大きくなっていき、20世紀の終わり頃には100粒で80gを超えるような大きさになったって訳さ。だから、たかだか20~30年くらい前に現在の大きさに到達したってことになるね。
粒が大きくなるに連れて、成熟期がだんだんと遅くなり、11月上旬だったものが、12月上中旬と、1ヶ月以上も遅くなったんだよ。これは、粒をより大きくするためにはそれだけ養分をため込む必要があるから、その分、成熟するまでに時間が掛かるってことなんだ。
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一般の大豆、すなわち白大豆や黄大豆などと呼んでいる大豆は、100粒で20g程度の重さだから、その違いがいかに大きいか分かるよね。この違いは栽培管理にも影響を及ぼしていて、白大豆は7月に種をまいて10月末~11月上旬には収穫という、3~4ヶ月あまりの栽培期間に対して、丹波黒大豆は6月に種をまき12月中旬に収穫という、約半年間の栽培期間を必要とするので、白大豆の約2倍近くの間、しっかりと手入れをしなくちゃいけないんだぞ。
しかも、収穫時期にはマメの水分が多くて柔らかいので、白大豆のようにコンバインで収穫できず、バインダーという機械で刈り倒して、枯れた葉を手作業でむしり取り、莢付きの枝を乾燥機に入れて乾燥させるという作業が必要になってくるんだ。それから莢から脱穀してゴミなどの不純物を取り除くとようやく黒大豆そのものに。しかも、これらの一連の作業には熟練した技術が必要なんだ。だから、収穫作業一つ取ってみても、一度にコンバインで収穫・脱穀・袋詰めされる白大豆と比べて、技術と労力と時間が掛かることが分かるだろう。さらに、これだけ手間暇かけても、単位面積当たりの収穫量は白大豆の約半分ほど。そりゃあ、相当高い値段で売らないと割が合わないよな!
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(この黒大豆は丹波黒大豆ではなく、100粒30g程度のもの)