レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

これは果実それとも種子?

以前、花の構造を説明したときに、雌しべの元の方にある子房という、将来種子になる胚珠をまもっている膨らんだ部分があるって話をしたよね。その子房が花の後に大きくなって、その中に種子を含んでいるものを果実って言うんだよ。
みんなが美味しくいただいているフルーツは、ほとんどが果実なんだけど、正確に言うと果実ではないフルーツがあるんだ。今回はそんなフルーツの種明かしをしようか。
まずは、みんなに大変人気のあるイチゴはどうだろう? イチゴは果肉の表面に種がいっぱい付いてるよね。でも、よく考えてごらん。果実の定義は子房が花の咲いた後に大きくなって、内部に種子を含んでいるものだから、果肉の表面に種がくっついているようなイチゴは、定義に反していると思わないかい? おかしいよね。では、種明かしをしようかな。

イチゴの果肉は実は子房が大きくなったものではなくて、花托(または花床)と呼ばれる花柄の先端の花が乗っかっている部分(花の土台)が大きくなったものなんだ。イチゴの花の構造を写真でよく見て考えてごらん。花の中心部に丸く盛り上がった部分(花托)があって、その表面にたくさんの雌しべがあるよね。もちろんその雌しべの一本一本の根元には1つの子房があるので、言わば、花托の上にたくさんの花が乗っかっている状態なんだ。そして花が終わった後に丸く盛り上がった部分、すなわち花托がどんどん大きくなっていくんだ。そうすると、その表面にある数多くの子房が少しばかり大きくなった果実(みんなが種だと思っている部分)を乗っけた形で、あのイチゴの形になるんだぞ。
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(中心の丸く盛り上っているのは花托で、その表面にたくさんの雌しべが乗っている)

さあ、おさらいをすると、イチゴの果肉は花托が大きくなったもので、その表面に果実(一見すると種子のように見える)がたくさん乗っかっているんだね。だから、イチゴの種というのはあのつぶつぶの中に一粒ずつ入っているんだよ。種のように見えるものは内部に種子を含んでいる果実なんだね。
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イチゴのように、一見、果実のように見えるけれど、子房以外の部分が生長して果実の主要部分となるようなものを偽の果実という意味で、偽果(ぎか)と呼ぶんだぞ。それに対して、子房が大きくなった中に種子を含んでる定義通りの果実を真果(しんか)と呼んでいるんだ。

では、もう一つの事例を見てみよう。次のフルーツはリンゴだぞ。 えっ、リンゴは花の後に子房が膨らんで中に種を含んでいるから、定義通りの果実、すなわち真果だろうって? そう思うのは素人の浅はかさ! そうは問屋が卸さないってもんさ。結論から言うと、リンゴやナシのようなフルーツは、イチゴと同じ偽果と言うグループに入るんだぞ。じゃあ、どこが真の果実ではないかって言うことだね。これも、花の構造と花が咲いた後の大きくなる課程を観察するとよく分かるぞ。
リンゴの花をよく見ると、雌しべの付け根にあるはずの子房が見えないんだよ。これは、写真の蕾を見てもらえれば分かると思うけど、萼の下あたりが膨らんでいるだろう。実はここの中に子房が隠されているんだよ。そして子房の周辺には花托と呼ばれる部分があり、がっちりと子房を守っているんだ。
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(表面上子房が見えず、萼の下部が膨らんでいる部分に子房が収納されている)
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リンゴの花が終わると、もちろん子房は大きくなってくるんだけど、それ以上に子房を取り囲んでいる花托が大きく成長して、リンゴの果肉に当たる部分となっていくんだ。だから子房の大きくなった本当の果実はみんなが捨ててしまう芯の部分なんだぞ。
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(中心部の線の内側、通常芯と呼ばれているところが、子房が肥大した部分に当たる)
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分かったかな、リンゴと同じような構造の偽果は、ナシ、ビワなどがあるぞ。これに対して、ウメ、モモ、カキ、サクランボなどは子房だけが大きくなったフルーツだから、真果なんだぞ。 どうだい、勉強になったろう?

秋に咲く海棠

朝夕の風に少し秋を感じる頃になると、庭の片隅の日陰に柔らかなピンクの花を咲かせ始める秋海棠。それまでの長い暑さでくたびれていた庭がパッと明るくなるよね。皆も好きな花の一つじゃないかな?
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さて、この秋海棠って花は、皆もよく知っているとおり、ベゴニアの仲間なんだな。ベゴニアと言えば、花壇によく使われる1年草のセンパフローレンス、花が豪華で見事だけど、高温と低温に弱くてなかなか素人には育てにくい球根ベゴニア、茎が堅くて背が高くなる木立性ベゴニア、レックスに代表される葉に表面に美しい文様がある根茎ベゴニア、それに年末の鉢物として出回るようになったエラチオールベゴニアなどなど、ベゴニアと一口では言えないほど変化に富んだ植物だよね。
このように多種多様なベゴニアの中で唯一、寒さに強くて庭植えで育てられるベゴニアがシュウカイドウ(秋海棠)なんだよ。

シュウカイドウは中国南部からマレー半島に自生しており、日本には江戸時代初期に園芸植物として導入されたようなんだ。秋海棠という名前は中国名の日本語読みで、春に咲く海棠の花色に似た花が秋に咲くことから名付けられたんだ。
ところで、「秋海棠西瓜の色に咲きにけり」と言う松尾芭蕉の句があるのを知ってるかい? この句の意味は、「秋口に秋海棠の花が西瓜の実ような紅色の花を咲かせているよ」っていうことで、上っ面を読むとそのままの意味なんだけど、実はこれには深い意味があるんだぞ。
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じつは、この句が詠まれたのは1690年頃らしいんだけど、秋海棠は1630年頃に、アフリカ原産の西瓜も1650年頃に中国から導入されたと言われているから、海外から導入された舶来の植物同士を、いかにも古くからある日本の植物のように、俳句に詠み込んだ芭蕉のセンスの良さが伺われるね。

さて、話は変わって、秋海棠はもちろんベゴニア全般に、有毒植物だって言うことは知っているかい? 秋海棠を含むベゴニアの仲間には、植物体全体、特に茎にシュウ酸という成分を含んでいて、舐めると酸っぱいんだけど、大量に摂取すると、体内のカルシウムと結合して低カルシウム血症をおこし、痙攣、昏睡、最悪死亡することもあるそうだぞ。シュウカイドウの茎には約1%のシュウ酸が含まれていて、シュウ酸の致死量が15~30gだから、1.5kgもの茎を食べたら命が危ないことになるけどね(公益財団法人日本中毒情報センター)。ついでに言っておくと、野山に生えているギシギシやスイバ、イタドリ、庭の雑草として有名なカタバミにもシュウ酸が含まれているから注意するんだぞ。
あっ、それからシュウ酸はホウレンソウにも含まれているからな(湯がくことにより、シュウ酸がお湯に溶け出すので、それほど気にすることはないぞ。
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月見草と待宵草、それに宵待草

月見草っていう名前は誰しも聞いたことがあるよね。花に興味のない人でも、どんな花か知らないけど、何となく風情のある名前だなぁってくらいは思っているかな。

このツキミソウって花は、アカバナ科マツヨイグサ属に属するメキシコ原産の一年生草本で、江戸時代の末期に観賞用として日本に入ってきたんだ。ところで、月見草の花は何色か知っているかい? えっ、黄色だって!? Boooooo! 確かにマツヨイグサの仲間は夕方から夜に咲く黄色い花が多いいんだけど、ツキミソウは白い花を付けるんだぞ。もちろん、月見草っていうくらいだから、夕方から咲き始めて翌朝には萎んでしまうんだけど、萎む頃には花びらはピンク色に染まっているんだ。
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ツキミソウが導入された時期に相前後して、他のマツヨイグサの仲間、マツヨイグサ、オオマツヨイグサ、メマツヨイグサなど数種類の仲間たちも導入され、新天地に来たツキミソウは他の仲間たちとの生存競争に負けてしまったんだよ(マツヨイグサ属はすべて南北アメリカ大陸が原産地で、日本には元々なかった植物だぞ)。今では、野生のツキミソウを見ること事態が非常に珍しくなっているんだ。だから、戦後~昭和30年代頃まで、日本中の空き地に大群落を作っていたマツヨイグサやオオマツヨイグサが、ツキミソウに代わって月見草と呼ばれるようになったみたいなんだ。(そのオオマツヨイグサも、今ではセイタカアワダチソウに取って代わられているけどね)。
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ちなみに、竹久夢二の「宵待草(よいまちぐさ)」っていう詩は、最初は「待宵草(まつよいぐさ)」と本人の自筆で書かれていたようだけど、語感の良さから夢二本人が途中から「宵待草(よいまちぐさ)」と書き換えたらしいぞ。でも、それにメロディーがついて大ヒットしたもんだから、「宵待草」という呼び名も大正~昭和の始め頃までは、メジャーになっていたみたいなんだ。でも、最近は聞かなくなったよね。

♬待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬそうな♬

あっ、早速口ずさんでるな! どうだい、懐かしいだろう?

さて、マツヨイグサの仲間には昼咲きのものもあって、その代表格がヒルザキツキミソウと呼ばれるピンクの花を咲かせる宿根草だね。一度植えておけば、大した世話をしなくても、初夏から夏にかけて爽やかなピンクの大きな花を咲かせ続けるので、先の園芸ブームの頃から結構人気があるんだ。みんなの中にも庭に植えている人がいるだろう?
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最近では見なくなったツキミソウ、みんなも探してみてごらん!