レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

楮、三椏、雁皮

さあ、みんなはこのタイトルの漢字が読めるかな? 我が輩と同年代のご年配の方なら読める人もいるだろうけど、普段、滅多に見かけない漢字だからねえ、読めなくても当然だろうね。 これは、順にコウゾ、ミツマタ、ガンピと読むんだ。 おっ、読みを聞いて、今回の話の内容が分かったようだね。そう、今回は「和紙」の話をしようと思っているんだ。
紙というものは、羅針盤、火薬、活版印刷と並んで、古代中国の四大発明の一つと言われているけど、みんなはそれは知っているかな? さて、その紙だけれど、みんなは蚕の繭から絹糸を取ることは知っているよね。 古代中国では、絹糸にならないような屑繭の使い道として、その懸濁液を簀で薄く漉いて乾かしたものに「紙」という字を当てたようなんだ。だから、「紙」という漢字は、編(へん)に繊維を撚り合わせたものの象形文字である「糸」が使われているのさ。 因みに旁(つくり)の「氏」という字は、匙の象形文字で、平らなことを表すんだってさ。 また一つ賢くなったなぁ。

さあ、漢字の話はそれくらいにして、紀元前200年頃に中国で発明された紙が、朝鮮半島を経由して日本に導入されたのは西暦600年頃だそうで、日本製の最古の紙はコウゾを原料として作られたことが分かっているんだ。 さてこのコウゾと言う植物は、製紙技術とともに大陸から導入されたもので、ヒメコウゾとカジノキという、ともに紙の原料として使われてた植物の雑種なんだぞ。だから自然のものではないんだけど、今では日本の野山に普通に自生しているんだ。でも、コウゾとカジノキは区別がつきにくく、それほど厳密に区別する必要もなかったみたいで、両者をひっくるめて大まかにコウゾと呼んでいるようなんだ。
コウゾという植物は、クワ科に属するんだけど、葉の形が様々で、これが同じ植物の葉かと思うくらいバラエティに富んでいるんだ(写真参照)。葉の写真を見れば、見たことがある人もいるんじゃないかな。

様々な形を表すコウゾの葉

次に、ミツマタという植物は、そろそろ香りを楽しむ季節になったジンチョウゲの仲間で、この3種の中では、おそらくみんなが一番良く知っている植物じゃないかな。花が綺麗なのと樹形が美しいので、庭木として植えている人も多いからね。ミツマタは、その名前の通り、枝分かれする際にほぼ必ず三つ叉になるところから名付けられたんだ。これも、中国南部の原産で、紙漉きの技術とともに日本に導入されたようだけど、今では日本全国の林床に自生しているんだ。特に、増えすぎて農作物被害をもたらすことで問題になっている鹿が嫌って食べないことから、最近、急速に増えていると言われているんだ。
ミツマタから作られる紙は、繊維が繊細で短いことから、きめの細かい表面が滑らかな紙ができることから、日本の紙幣の原料として使われているんだぞ。
 ミツマタの花
 ミツマタの枝別れ
 ミツマタの夏の姿

さて、最後のガンピだけれど、この植物を知っている人は少ないだろうね。栽培が難しく、ほとんど野生のものを採取していることから、量も少なくコストもかかってしまうんだ。ただ、繊維が非常に細かく短いので、高級和紙の原料として使われているんだけど、野生のものが絶滅危惧種などに指定されている地域も多くて、原料を集めるのに苦労しているようなんだ。
 ガンピ
兵庫県内にも、多可町に「杉原紙」という伝統的な和紙があって、今でも栽培したコウゾを原料として、手漉きで生産されているから、是非その現場を見学してほしいな。もちろん紙漉き体験もできるからね。良い経験になると思うよ。
 杉原紙研究所
 杉原紙研究所へのアクセス

これは花弁?、萼弁?、それとも苞?(その②)

前回は、植物の基本的なことを覚えてもらったけど、今回はいよいよ本題に入るぞ。
花弁や萼弁など、花を構成する要素は葉が変化したものだってことは前回話したけど、今回は、その葉が変化したものがさらに変化するって話をしようか。

みんなが綺麗な花だと言って庭に植えたり、切り花で観賞している花の中には、花弁がなくなっているもの、もしくは、ほとんど小さくなってしまっていてその役割(受粉を手伝ってくれる昆虫たちを呼び寄せること)を果たしていないものがあるんだ。では、どんな花が花弁がなくなってしまっているのか、実際の植物の写真を見てみよう。

実は、花弁が退化してほとんどその役目を果たしていなくて、萼弁が花弁の役割を果たしている分類学上のグループがあるんだ。それは、キンポウゲ科に分類される植物たちなんだぞ。キンポウゲ科に属する植物たちは、花好きのみんなには最もポピュラーなグループだよね。クリスマスローズ、アネモネ、クレマチス、ラナンキュラス、デルフィニウム、オダマキ、ユキワリソウ、トリカブト、キンポウゲ、カラマツソウ、セツブンソウ、シラネアオイ、イチリンソウ、シュウメイギク等々、数え上げれば切りがないよね。
クリスマスローズ
(雄しべの付け根に退化して袋状になった小さな花弁がある)

アネモネ

クレマチス

ラナンキュラス

セツブンソウ
(雄しべの外側に先端が黄色いマッチ棒状の花弁がある)

アジサイ
(花の中心にある小さな粒状のものが、花弁に包まれた雄芯と雌芯)

この植物たちの花は、一見すると綺麗に色づいた立派な花弁を持っているように見えるんだけど、その花弁のように振る舞っているのはみんな萼弁なんだぞ。クリスマスローズやセツブンソウなど、花弁の痕跡がわずかに残っているものもあるんだけど、ほとんどは消えてなくなっているんだ。その証拠に、花弁の下には、本来必ず萼弁があるはずなんだけど、これらのキンポウゲ科に属する花を見ると、花弁のようなものの下には萼弁らしきものがないのが分かると思うよ。その理由は花弁に見えているのが萼弁だからさ。あっ、そうだ。ついでにもう一つ、アジサイの花も色づいてる花びら状のものは萼弁だからね。

じゃあ、もう1つ事例を挙げてみようか。今度は、花弁も萼弁もほとんどなくなっているか、ものすごく小さくなっている花で、葉が花弁の役割を担っている植物なんだ。
ところで、みんなは苞(ほう)という部分を聞いたことがあるかな。これも葉が変化したものなんだけど、つぼみの時は花全体を包んだりして、外敵から大事な花を守る役目を持っているのが本来なんだけど、その役目以外に、形を変えて綺麗に色づくなどして、昆虫たちの目を引く存在にまでなった苞があるんだ。その代わり花弁や萼弁は小さく地味な存在か、ほとんど消えてなくなっているんだけどね。
みんながよく知っている植物では、ポインセチア、ブーゲンビレア、ミズバショウやカラー、ハナミズキなんかがそうだけど、どれも小さくなった花が苞に包まれているか、苞の中心部に固まっているよね。このように、小さくて目立たない花の受粉を手伝ってくれる昆虫たちを引き寄せるために、苞が花弁の代わりをしているんだね。どうだい、植物たちも子孫を残して生き残っていくために、いろいろな戦略を立てていることが分かったかな。
今回もイイ勉強になっただろう!
ポインセチア(赤いのが苞)

ブーゲンビレア(赤いのが苞)

ミズバショウ(白いのが苞)

ハナミズキ(ピンク色のが苞)

これは花弁?、萼弁?、それとも苞?(その①)

これまでも我が輩の話の中で、花びらだと思っていたら萼だったとか、苞だったとかっていうのが何度か出てきたことを覚えてるかな。今回は、この辺の話をあらためて勉強してもらおうと思ってな。
さて、この話をする前に、まず、植物の基本をしっかりと復習してもらおうかな。植物の体はすべて、葉と茎と根の3つの部分からできているんだ。こういうと、すぐに、じゃあ、花はどうなの?っていう質問がすぐに飛んでくるんだな。まあまあ、そんなに慌てなさんな。
    花の構造

では、その質問から答えるとするかな。一見して見るからに葉、茎、根以外の部分というのは、実はこの3つのどれかが形や色を変化させているだけなんだぞ。この中で、最も変化が大きくて、かつその種類が多いのが葉なんだ。
では、その変化の種類を書き出してみると、

葉:花弁、萼弁、雄しべ、雌しべ、子房、苞、巻きひげ、吸盤、刺など
茎:刺、蔓、ランナー、塊茎、球茎、根茎など
根:気根、呼吸根、支柱根、板根など

どうだい、茎や根が変化したものは、何となくそれらしいものばかりだけど、葉が変化したものは、雄しべや雌しべ巻きひげに吸盤、さらには刺など、その形からは想像も付かないものもあるだろう?
さらにもっと言えば、花は花柄以外はすべて葉が変化したものってことさ。だから花を構成している各部分のことを、専門用語で花葉(かよう)って言うんだぞ。さあ、それでは実際の変化を写真で見てみようか。

ヤブガラシの巻きひげ(葉が変化)

ツタの吸盤(葉が変化)

サボテンの刺(葉が変化)

バラの刺(茎の表皮が変化)

イチゴのランナー(茎が変化)

グラジオラスの球茎(茎が変化)

ショウガの根茎(茎が変化)

ラクウショウの呼吸根(根が変化)

支柱根(根が変化)

板根(根が変化)

いろいろに変化した葉や茎や根を見てきたけど、どうだい、なかなかの変身ぶりだろう?
じゃあ、続きは次回、葉が変化した花がさらに変化していく実態を見てみようか。