レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

仙人掌とシャボテン

前回は、サボテンと多肉植物の区別について簡単に勉強してもらったけど、今回と次回でそれぞれについて、さらに深く掘り下げて勉強してもらうぞ!

まずはサボテンからいくとするか。サボテンが日本に入ってきたのは、16世紀の後半で、南蛮人によって持ち込まれたらしいんだ。彼らが持ち込んだのは「ウチワサボテン」という大きくて平たい丸い形をしたサボテンで、その茎の切り口で衣服の汚れを取ったり、樹液を石鹸(シャボン【ポルトガル語】)のように使っていたため、石鹸のようなものという意味で「石鹸体(シャボンテイ)」と呼ばれるようになったらしいぞ。それが次第に訛っていって現在のサボテンになったんだな。でも、今でもシャボテンという呼び名を使っているところもあるからなぁ。
 ウチワサボテン
仙人掌と書いてサボテンと読むのは知っていたかい? たぶんみんなは知らないんだろうなぁ。サボテン愛好家の中ではよく知られてことなんだけど、これは中国でウチワサボテンのことを仙人掌と書くことから、それを拝借したようなんだ。仙人掌(サボテン)は、呼び名と漢字の起源が全く別物なんだってこと覚えておくようにな。

さて、サボテンは、サボテン科に属する植物の総称で、南北アメリカ大陸に千数百種の野生種があるってことは、前回勉強したとおりだけど、そのすべての種に共通していることがあるんだぞ。
 (絨毛に包まれて刺が規則正しく生えている刺座)
それは、刺座(しざ)と呼ばれる器官を持っていることなんだ。ちょっと難しくなるけど、刺座とは、刺を生じる特別な器官で、枝が極端に短くなって,しかも体内に埋もれてしまった短枝(たんし)の変形した器官で、刺はその短枝の葉が変形したものなんだ。ところで、短枝とは、葉と葉の間すなわち節間の成長が起こらないために、短い茎に葉が束のように生えている枝のことで、サボテンの刺は全て刺座より出てるんだぞ。 しかも刺座には刺のほかに毛も生えていて、ふわふわした長い毛や絨毯のような短くて密に生えてる毛もあるんだ。 サボテン以外の多肉植物にはこの刺座がないことから区別できるんだぞ。

サボテンがあの独特の形をしているのは、もちろん乾燥に耐えて生き抜くためで、あの樽のような太い茎の中に、たっぷりと水分を蓄えているからこそ、砂漠のような極端に雨の少ない気象条件でも生きていくことができるんだね。どうだい、すごいだろう? サボテンに限らず、全ての植物は、地球上のあらゆる環境に適応して進化し、その形や大きさを自在に変化させ、生き延びる術を見いだしてきたんだぞ。
 球形サボテンの代表格「金鯱」
  西部劇で有名な柱サボテン
 柱サボテンの花

サボテンと一括りに言っても、全ての種が乾燥地帯に生えているわけじゃなくて、月下美人やクジャクサボテン、それにドラゴンフルーツとして有名な紐サボテン類など、中南米の熱帯雨林などに自生する森林性サボテン類、
 森林性サボテンの月下微震
 紐サボテン類のドラゴンフルーツ
 ドラゴンフルーツの花
クリスマスカクタスやデンマークカクタスと呼ばれている、ブラジルの高山地帯に自生するシャコバサボテン類、さらには、枝も葉もあって普通の木と同じような形態のコノハサボテン類ながあるんだ。
 森林性サボテンのシャコバサボテン
 コノハサボテンの花
 刺のあるコノハサボテン
みんなが考えつく、砂漠に生えている球形や柱形をしているサボテンだけがサボテンじゃないことをしっかりと頭にたたき込んでおくんだぞ。

多肉植物の世界

さて、前回のサボテンに引き続き、今回はサボテン以外の多肉植物について勉強してもらうぞ。といっても、サボテンとは違って、類縁関係のないいろいろな植物の集まりのうえに、サボテン以上に種類数が多くて、これまた一口には言えないんだよ。・・・・・と言っていても始まらないので、限られた紙面の中でわかりやすく説明するとするかな。

多肉植物とは、葉、茎または根に水を貯蔵して、肉厚になった植物の総称って言うのは、前々回で勉強したね。もちろんサボテンも多肉植物の一部なんだけど、サボテン科として共通の形態を持った大きなグループだから、独立して扱われてるんだったね。
じゃあ、サボテン以外の多肉植物ってどんなものがあるんだろう、みんな頭の中に思い浮かべてごらん?  うんっ? アロエにマンネングサ、金の成る木にマツバギク、リュウゼツランにベンケイソウ、バオバブ。お~ぉ、どんどん出てくるねぇ。
今みんなが頭の中に思い浮かべた多肉植物は、水分を貯蔵する組織を持っているという共通点だけで一括りにされているんだから、そりゃあ、世界中にたくさんあって当たり前だよね。
 マツバギク
 オオベンケイソウ
 アエオニウム・アルボレウム
 ハオルシア・マグニフィカ

*多肉植物の中でも、植物学的な分類で多くの種を含むものとしては、ハマミズナ科、ベンケイソウ科、トウダイグサ科、ツルボラン科などがあり、これらの科はそれに属するほとんど多くの植物が多肉植物なんだ。マツバギクに代表されるハマミズナ科は、メセン類とも呼ばれ、リトープスやコノフィツムなどの葉が高度に多肉化したものが含まれ、また、ベンケイソウ科は、代表格のベンケイソウをはじめ、金の成る木やマンネングサを含み、ツルボラン科はアロエなどを含んでるんだ。トウダイグサ科にはみんなもよく知っているポインセチア(多肉ではない)が含まれるけど、千種ほどの多肉植物があるんだぞ。*
 リトープス
 キダチアロエ
 リュウゼツラン
 バオバブ

最近は、雑貨屋さんなどで、鉢土が樹脂などで固められたサボテンや多肉植物が売られているのをよく見るけど、形や色が面白いので、インテリア小物として室内に飾るのはかまわないけど、あくまでも生きている植物だってことを忘れないでほしいよね。長期間水をやらなくても枯れないので、すっかり物扱いされてしまっていて、悲しくなるよ。売る方も売る方だけど、買う方も買う方だね。みんなの中にはそんな物を買ってきて室内に飾っている人がいないことを信じたいよ。

多肉植物が生えている環境というのは、もちろん極端に乾燥するところなんだけど、一年間全く雨が降らないっていうわけじゃなくて、多くのところでは、雨の降る時期と降らない時期、すなわち雨季と乾季がはっきり分かれているんだ。多肉植物も生きている植物だから、生長する時期に水分を必要とするのは当たり前。乾燥地帯でも、短いながらも雨の降る時期があるので、雨期の間に貴重な雨水を最大限利用して生長するんだ。そして、乾期に備えて体内に十分な水を蓄えておくんだよ。そうすることによって雨の降らない時期を耐えることができるのさ。

多肉植物が水を貯める能力があるのは、その形を見ればわかることだけど、それ以外に乾燥に耐えるための仕組みがあるんだぞ。それは、体内に貯蔵した水分をいかに減らさないようにするかってこと。通常の植物は葉の裏に気孔というごく小さな穴があって、そこから余分な水分を蒸発させたり、光合成を行うための二酸化炭素を取り込んだりしているんだけど、多肉植物は日中の高温時には気孔を閉じたままにしておくことで、体内の水分の減少を抑えているのさ。 ん?ちょっと待てよ。日中に気孔を閉じていたら光合成に利用する二酸化炭素が取り込めないじゃないかって? ご心配には及びません。多肉植物は夜間に気孔を明けて、そこから取り込んだ二酸化炭素を濃縮して細胞内に貯蔵する能力を備えているのさ。だから、日中は貯蔵している二酸化炭素を活用して、豊富な日射で光合成ができるってわけさ。どうだい、多肉植物って、なかなかすごい能力を秘めてるだろう?

仏様の後背を持った花たち

今やゴールデンウィークまっただ中。今年はどこにお出かけかな。
えっ、どこにも行く予定はないって! そんな寂しこと言わないで、久しぶりに夫婦でお寺巡りなどは如何かな?

さて、お寺のご本尊の仏像を拝見すると、仏様の後ろに衝立のように立っているものがあるだろう? それは後背って言うんだけど、仏様が放つ後光を表したものなんだって。
 東寺の不動明王

ところで、植物にも仏様の後背のように、花の後ろや周りに衝立のようなものを付けているのがあるんだけど、みんなは思いついたかな?

おっ、さっそく思いついた人もいるようだね。そう、ミズバショウやカラー、アンスリウムなんかがそうだね。それらの花の構造をよく観察してごらん。花茎の先端にこん棒状のものがあり、その周りを取り囲むように色づいた、一枚の花びらのようなものが取り囲んでるよね。アンスリウムは取り囲まずに、後ろまたは下側に平べったく立っているけどね。こん棒状のものを仏様としたら・・・、ね、色付いた一枚の花びら状のものが後背に見えるだろう?
 ミズバショウ
 カラー
 アンスリウム

この一枚の花びら状に見えるものを、植物学の世界では仏様の後背に見立てて、「仏炎苞(ぶつえんほう)」って呼んでるんだ。なかなかいいネーミングだろう? この「仏炎苞」は名前のとおり「苞」の一種で、サトイモ科の植物に特徴的なものなんだ。えっ、「苞」って何だって? じゃあ、もう一度おさらいしておこうか。「苞」とは、花や花の集まりである花序の基部にあって、蕾の時から花を保護している葉が変化したものなんだぞ。 その「苞」が大きくなったり、色付いたりして花びらの代わりに昆虫たちを呼び寄せる役目を果たしているのさ。ほら、ブーゲンビレアやハナミズキ、ポインセチアなどがそうだったよね。覚えているかな?

サトイモ科の花は、「仏炎苞」に囲まれたこん棒の周りにびっしりとたくさん並んでいるんだけど、花びらも萼もなくて、雌しべと雄しべしかないんだ。だから、仏炎苞に花びらの役目をしてもらってるんだぞ。ついでに言っておくと、このこん棒は、花の集まりだから? そう、花序だったな。このように肉厚のこん棒状の表面に花がびっしりと並んでいる花序を、「肉穂花序(にくすいかじょ)」と呼んでるんだ。

 マムシグサ
 スパティフィルム
「仏炎苞」を観賞の対象としている植物は、このほかにもマムシグサやウラシマソウなどのテンナンショウの仲間やスパティフィルムなどの観葉植物などがあるんだ。そして、ついでに言っておくと、みんなの大好きなコンニャクの花もそうなんだよ。
 コンニャク