レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第1話 スミシアンサ 

新企画の初回を飾るのは、スミシアンサ!
この花の名前を聞いたことのある人はいるかな? 多分これを読んでるみんなはほとんど聞いたことがないんじゃないかなぁ。えっ、フラワーセンターで見たことがあるって? さすがムッシュ・フルーリのファンだけあって、フラワーセンターに来てくれてるんだね。
そう、国内ではあまり見ることのないスミシアンサだけど、兵庫県立フラワーセンターでは、11月の下旬ころから年明けにかけて、温室内で見ることができるんだぞ!

さて、スミシアンサっていう花は、イワタバコ科に属する植物で、メキシコやグァテマラに自生していて、地下にアキメネスと同じような鱗状の根茎(すなわち球根)を持つ多年草なんだ。野生種は7~9種ほどあるといわれていて、それらを交配して園芸品種も作られているのさ。フラワーセンターには、独自に育成した園芸品種なども含めると、30種類程度を栽培しているんだぞ。

5~6月に球根を植え付けて、夏から秋の間に生長した茎の先端に穂状の花序を付けて、初冬になるとベル状の花をたくさん咲かすのさ。写真を見てごらん。どうだい、なかなか可愛くて綺麗な花だろう? しかも、葉に濃い赤銅色の紋様が入るので、花の無いときも観葉植物として利用できるんだ。
 
さて、スミシアンサを育ててみたくなったかな? でも、なかなか手に入らないのがこの植物の短所かな。花の咲く時期になると、フラワーセンターの花売店で少しだけれど販売しているから、本当に欲しい人はチャンスを逃すんじゃないぞ!
 

栽培方法は、近縁種のアキメネスとほほ同じなんだけど、アキメネスを栽培した人もそんなに多くはないだろうね。5月頃に鱗状根茎(すなわち球根)を植えこんで、半日陰で栽培すると、芽が出て順次葉を広げていくよ。ちょっと暑がるので、最近の真夏は明るい日陰の方がいいかな。秋の彼岸も過ぎ、秋風が吹くようになると茎の先端に蕾が見え出して、早ければ11月中旬ころから咲き始めるぞ。花が咲き始めたら屋内の明るい窓辺に取り込んで観賞しよう。花も終わるころになると、外は随分寒くなってくるから、乾かし気味していると、葉や茎が枯れてくるので、枯れた地上部を根元で切って、鉢のままで春まで室内で管理しよう。水やりを止めて5℃以上で保管しておき、来春に鉢の土を掘り起こすと、株元に鱗状根茎がいくつかできているから、それを一つずつ切り離して、また新たな鉢に植えこむんだ。これで一年の栽培サイクルが完了だぞ。分かったかな?
 

 操の「へぇ~!」
スミシアンサは花の形がとってもエレガント!
私は花が大好きなんだけど、大きな蘭や菊、花の形ひとつとってもそれぞれの形には美しいだけではなく、何かの役割があるのかなぁ~なんて、いつも不思議に思えてきます。そういえば虫を食べる花もあるんですよね、フラワーセンターには。そこでしか見られない花がきっとたくさんありそう。これからの花探検が楽しみです。

「スミシアンサ」を見に行こう!!
兵庫県立フラワーセンターのHPはこちら>

 ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。
バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

第13話 春菊

(操さん)
「トントン!本格的な寒さとともに、春菊が柔らかくおいしくなってきましたね。私たちが手近にありすぎてそのありがたみが分からないのが、土の上からすぐ葉っぱが始まる菊菜。菊菜は砂が絡みやすく雨にあたると腐りやすい。だけど香りの良さと柔らかさは格別!春菊のこと色々教えてくださいな。」

(フルーリ)
師走に入り、今年も残り少なくなってきて、いよいよ本格的な冬がやってきたね。吾輩は寒いのは好きじゃないけど、大好きな鍋料理が食べられるので、寒い冬も良しとしなきゃな。さて、鍋料理に欠かせない野菜といえば、白菜、大根に葱などが思い浮かぶだろうけど、忘れちゃいけないのが春菊だな。菊の仲間特有の香りを持っているのが特徴の葉物野菜だから、好き嫌いが分かれるだろうけどな。吾輩の子供のころはこの香りが嫌で嫌で、葱とともに嫌いな野菜の双璧だったね。みんなはどうだい? でも、関西生まれの吾輩の子供のころは、「きくな(菊菜)」って呼んでいたよな。今でも、関西では、「春菊」というより「きくな」って呼ぶことの方が多いと思うけどな。

さて、実は春菊を野菜として食べているのは、世界広しといえども中国や日本などの東アジアだけなんだぞ。でも、この春菊のふるさとは、東アジアではなくてヨーロッパの地中海沿岸地域なんだ。ヨーロッパでは古くから栽培されていたんだけど、あくまでも花を観賞するためで、あの菊独特の香りを持つ茎葉を食べようとは思わなかったんだろうね。それが宋の時代に中国に入ったころから、食用として利用されるようになったみたいなんだ。 原産地周辺では、食べられていないのに、遠く離れた極東地域で食べられているんだから、文化の違いって面白いね。しかも、日本では、茎葉だけでなく、食用菊として花弁も食べるんだからねぇ!

 シュンギクの野生の状態(イスラエル)

ところで、みんなは春菊の花を見たことがあるかい? そんなの知らないって? 実際に春菊を栽培した経験でもないと、その花を見る機会はまずないからねぇ。春菊の栽培は簡単だから、みんなも一度栽培してみるといいよ。秋の9~10月頃に種を播くと、11月~年末にかけて収穫できるぞ。収穫時に株を堀り上げないで、茎葉だけ切り取って使えば、また株元から茎が伸びてきて、春にはきれいな黄金色の花を咲かせるよ。冬の間は野菜として利用して、春になると花を楽しめるんだから二度おいしいぞ!
 春菊の花

シュンギクは、長い間キク属の一員として分類されていたんだけど、近年の遺伝情報による分類法によって別の属に位置づけられちゃったね。でも、キク属のChrysanthemum(クリサンテムム)という学名は、ラテン語で「黄金の花」という意味で、もともとヨーロッパで広く栽培されていたシュンギクに対してつけられた名前なんだ。みんなも、菊といえば黄色い花をイメージするんじゃないかな? 日本では、菊といえば秋の花っていうイメージがあるけど、シュンギクは春に花を咲かせる菊だから「春菊」って名づけられたんだな。

古くに中国から日本に導入された春菊だけど、長い間全国各地で栽培される間に、その地域独特の特徴のある系統や品種が生まれたんだな。今では、葉っぱの切れ込み方で、大きく分類されているんだけど、「大葉種」といって、葉の切れ込みが少なくて大きくて肉厚で柔らかく、香りも弱くて味も癖がないもので、主に、四国や九州で栽培されているんだ。
 大葉種
「中葉種」は、最も多く栽培されている系統で、香りが強く、葉の切れ込みは「大葉種」と「中葉種」との中間的で、茎が伸びて背が高くなるものと、根元から株立ち状になるものとがあるんだ。
 中葉種
そして「小葉種」は、葉が小型で切れ込みが深く、葉肉が薄くて収量が少ないために、現在ではあまり栽培されていないんだ。
 小葉種
また、特に奈良県北部の農家が受け継いで来た品種で、奈良県で選抜されて全国に広まった「大和きくな」という、「中葉種」と「大葉種」の中間的な品種もあるんだ。
 大和きくな(出典:奈良県HP)

春菊は、鍋料理にはなくてはならない野菜だけど、お浸しや胡麻和え、天ぷらにしてもおいしいよねぇ。また最近では、サラダとして生で食べることも多くなっているようだね。
さあ、操ちゃんはこの春菊をどんな料理に仕上げてくれるのか、楽しみだなぁ。

 

(操さん)
「へぇ~、お花畑も素敵!春菊は炊いても、湯がいて和え物にしても、あ、すき焼きにも欠かせませんよね。さっと炒めて、牛肉の付け合せにもよく使います。お肉の旨みを吸った春菊は最高においしい!やっぱり見るより食べたい春菊です。」
「牛肉のさっと焼き春菊のソテー添え」のレシピはこちら>

🌸【予告】2019年1月、ムッシュ・フルーリの新連載がスタート🌸
「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ!
次回からは、我がフラワセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、とっておきの一品を紹介していくぞ! 栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを繰り出すから、楽しみにな!

第12話 りんご

 (操さん)
「トントン!秋の深まりとともに、さまざまなりんごが店先に並んでいます。猛暑を乗り越え、今年もおいしいりんごが食べられる幸せに感謝ですね。身近で何気ない存在だけど、ちょっとくたびれた時、一口食べるとなんだか元気がでるんです。大好きなりんごの話を聞かせてくださーい。」

 

  (ムッシュ・フルーリ)
秋も随分深まってきて、日本が誇るりんごの王様「ふじ」も随分出回るようになってきたね。さて、今回は操ちゃんのお願いで、りんごについて薀蓄を語ることにするよ。

みんなは、「ワリンゴ」っていう名前を聞いたことがあるかい? 「西洋リンゴ」に対して「和りんご」ってい言うことなんだけど、もともとのりんごの野生種は、コーカサス北部地方らしいんだ。それが平安時代には中国を経由して日本に入ってきてたんだな。江戸時代頃までは、主に仏事用として利用されていて、大きさも直径が3~4cmくらいとピンポン玉よりも小さかったんだな。この古くから日本で栽培されていたものを「和りんご」と呼ぶようになったのは、江戸時代の末期に西洋から今のリンゴに近いものが導入され、それを「西洋リンゴ」と呼ぶようになったからさ。日本で初めて西洋リンゴを栽培したのは、あの越前福井藩主だった松平春嶽で、文久2年(1862年)にアメリカ産のリンゴの苗を入手して、江戸の福井藩の下屋敷内で栽培していたらいいんだ。また、それよりちょっと前に、加賀藩の下屋敷で栽培されていたという記録もあるらしいんだ。

明治4年に、当時の政府がアメリカから75品種もの苗木を導入し、北海道に植栽したんだ。それらが中心となって、明治20年代頃から本格的に日本国中に西洋リンゴが普及したんだぞ。今では、それらの品種を基にして、日本独自の品種が育成され、国内で約200品種、世界中では1万品種ほど栽培されていると言われているんだぞ。

「 ふじ」(有袋栽培)
  「サンふじ」無袋栽培」
さて、こんなに多くの品種があるんだけど、世界で最も生産量の多い品種を知っているかな? それは、日本が世界に誇る「ふじ」っていう品種なんだ。みんなも良く知っているよな。 もちろん海外では「Fuji」って標記されるんだけどな。 同じ「ふじ」っていう品種を無袋栽培したものが「サンふじ」という名前で流通しているのは知っているかい? 無袋栽培って何かって? えっ、知らないの!? じゃあ、説明してあげようか。

りんごは、花が終わって果実がある程度大きくなったら、果実の色を鮮やかにして商品価値を上げるために、果実一つ一つに紙で作った袋を被せるのが一般的な栽培法なのさ。
  リンゴの花
でも、袋を被せないで、栽培したほうが果実に日光が多く当たり、見かけは悪いけど糖度やビタミンCが高くなるんだ。だから、外見より中身を重視した、袋掛けをしない栽培方法を無袋栽培といって、農家にとっても作業の負担が軽減されるので、近年増えているのさ。この無袋栽培で生産された「ふじ」を、袋掛けをしたものと区別するため、「サンふじ」という名前で出荷するようになったってことなんだ。だから、「サンふじ」の方が見かけは悪いけど、糖度が高く美味しいうえに、随分お安いので庶民の味方だな!みんなも一度食べ比べをしてみるといいよ!
 有袋栽培の状況
 無袋栽培の状況

ところで、りんごの産地といえば? そりゃあ青森とか長野だろうって? まあ、その通りなんだけど、実は、わが兵庫県にも小さいながらも産地があるのを知っているかな? りんごの栽培は寒いところっていうイメージがあるけど、西日本の温暖地でも結構育つもんなんだぞ。県内で最大の産地は、宍粟市波賀町の原地区で、約3.6haの面積の園地に10品種1,200本ものリンゴが植栽されているんだ。ここでは、8月下旬~11月下旬までりんご狩りもできるから、ぜひ訪れてみるといいよ。このほかに、神鍋高原や、神戸市のフルーツフラワーパークでもリンゴを栽培しているぞ。本場の青森や信州産のりんごもイイけど、たまには県内産のりんごも食べてみてほしいな。

さて、ついでにもう一つ薀蓄を述べさせてもらうかな。みんなが食べているりんごだけど、あれって本当の果実じゃないってことは知ってた? モモは本当の果実なんだけどね。えっ、どう言うことかって?
 りんごの果実
果実には、その構造上2種類に分けられていて、果実の大部分が成熟した果皮からなる場合を真果(しんか)、大部分が果皮以外からなる場合を偽果(ぎか)(仮果、副果とも言う)と呼んでるんだ。
別図を見てもらうとよくわかると思うんだけど、りんごは花が咲いているときの子房の部分が、果実になると、みんなが食べない芯の部分になるんだよ。みんなが食べているのは、花弁や顎弁、それに雌蕊や雄蕊がくっついている元の部分、すなわち花托というものが、肥大して大きくなったところなんだ。
それに対して、モモは花が咲いているときの子房の壁が肥大して大きくなったもの(これを果皮という)なので、果実そのものを食べていることになるんだぞ。どうだい。また一つ賢くなったね。
真果と偽果(仮果)出典:小学館「デジタル大辞泉」

さあ、今日は頭をよく使ったので、ここらで操ちゃんの料理が食べたくなったね。りんごを使った料理のメニューは、きっと県内産のりんごを使っていると思うぜ! ねえ、操ちゃん?

 (操さん)
「へぇ~、兵庫県でもたくさん作られてるんですね。りんごといえば、信州・長野や、青森、岩手のことばかり気になっていました。りんごはそのまま食べてもおいしいけど、焼きりんごやアップルパイなど焼き菓子にもよく使われます。お家にあるりんごとバナナで作るお菓子をご紹介します。さて、お茶でも入れましょうか。」
「バナナップルケーキ」のレシピはこちら>