レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

バニラの香り

子供の頃、台所にあった小さな茶色い薬瓶、その中の液体がこの世のものとは思えないほど、とろけるような甘い香りを発していたので、子供心に何とかその液体の味を確かめてみたいものだと、母親の目を盗んでちょっと舐めてみた。その瞬間、ビリッと舌の先に刺激を感じたかと思うと、凄い苦みが口の中に広がった。それと同時に鼻に抜けていく甘い香り。何だこれは! 香りと味のこの大きな落差!
みんなの中には、子供の頃のこんな思い出を持っている人も多いんじゃないかな。そう、この甘い香りの正体はバニラエッセンスだったんだね。

バニラという香料は、最近でこそバニラビーンズそのものが、菓子材料店などで売られるようになったことから、知ってる人は多いだろうけど、じゃあ、バニラという植物はどんなものか知っている人はまだまだ少ないみたいだね。

バニラの香り①バニラの花  バニラの花
バニラは、中米に自生するラン科バニラ属に属する蔓性植物で、現地では数十メートルにも生長するんだぞ。蘭の仲間では最も名の売れている植物だろうね。カトレヤやシンビジュームを知らない人はいても、バニラを知らない人はいないだろうからね。最近では観葉植物として出回っていることもあるぞ。ただ、バニラが蘭の仲間だってことを知ってる人は少ないだろうけどね。

バニラの香り②バニラの栽培風景 バニラの栽培風景
バニラは、現在はマダガスカル、インドネシア、メキシコなど世界各地の熱帯地域で栽培されているんだ。花のあとにできる莢状の果実を発酵させてできるのがバニラビーンズで、日本にはこのバニラビーンズの形で輸入されているんだよ。
バニラの香り③バニラの未熟果 バニラの未熟果

バニラビーンズを縦半分に割ってみると、中心部に黒い小さな粒々が密集しているよね。これが発酵したバニラの種子なんだけど、ケシ粒よりも小さくて発酵前ならフッと吹けば飛んでしまうほど小さいんだ。この発酵した種子に含まれるバニリンと言う化学物質が香りの正体。これを香料としてアイスクリームやカスタードクリーム、ケーキ等に使っているんだ。最近では人工的に合成されたバニリンを使うことも多いけど、クリームの中に黒い粒々が見えるものは、本当のバニラを使っている証拠だね
バニラの香り④発酵済のバニラビーンズ 発酵済のバニラビーンズ

スミレ~花が咲かないのに種ができる~

日本の春の野草の代表と言えば、そう、やっぱりスミレだろうね。さすがにスミレを知らない人はいないよね。
すみれ①スミレ スミレ
さてこのスミレ、日本国内に自生している種類だけでも、亜種や変種を含めると250もあるんだよ。スミレ類は、今進化の真っ最中で、地域ごとに少しずつ変化しているんだよ。
すみれ②エイザンスミレ エイザンスミレ
すみれ③オオバキスミレ オオバキスミレ
すみれ④タチツボスミレ タチツボスミレ

ところで、みんなはスミレを観察してて不思議に思ったことはないかい? スミレは春先に紫色や黄色の花を咲かせるけど、花が咲いている時期はせいぜい2週間ほど。でも、そのあとにできる果実は初夏頃まで次々と生まれてきて、種を飛ばしているんだよ。これに気付いたそこのあなた、なかなか観察眼が鋭いね。でも、どうして次々に実が成るのかって?

では、種明かしといこうか。実はスミレの仲間は花が咲く花と咲かない花の2種類があるんだ。春先に最初に咲くいくつかは普通に花を咲かせる花で、その花が咲き終わると花が咲かない花が次々と生まれてくるんだ。じゃあ、花の咲かない花って言うのはどんなのかって? 株元から小さな蕾が立ち上がってきて、そろそろ咲く頃かなって思っていると、実が大きくなり始めるんだ。この花が咲かない花を「閉鎖花(へいさか)」と呼んでいて、花びらが全くないんだ。蕾のままで、雄しべから花粉を出して雌しべの先に受粉して、受精が完了。すぐに実が大きくなってくるんだ。だから、確かに蕾が次々と上がってきているのに、花が全然咲かなくて、いつの間にか実がたくさんできているってことになるんだね。
すみれ⑦閉鎖花 閉鎖花
すみれ⑤スミレの果実 スミレの果実
本来は、花を咲かせて、昆虫たちが花粉を媒介して受精し、実が成って種ができるという道筋を通るんだけど、たくさん子孫を増やすためには、それだけではなかなか間になわないんだね。そこで考えついたのが、昆虫たちに頼ることなく、自分自身で受精して(自家受粉)、種をどんどん生産することなんだ。普通の花が終わったあとに、初夏ぐらいまで次々と「閉鎖花」を生み出して、種をどんどん生産することにより子孫を増やそうとしているんだね。

ところで、スミレの実が熟すると、縦に三つに割れて中にある種を周辺に飛ばすのは知っているよね。その種をよく見ると、端っこに白いねばねばとしたものが付いているのが分かると思うよ。これはエライオソームといって、アリの好む糖分が含まれているので、アリはこれを見つけると自分の巣まで運んでいくんだよ。 そう、スミレはアリを巧く使って、種を遠くに移動させているんだぞ。どうだい、なかなか頭が良いだろう?
すみれ⑧果実が熟して3つに割れたところ 果実が熟して3つに割れたところ
すみれ⑥種子(白いエライオソーム)  種子(白いエライオソーム)

 

菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜・・・・・

3月にもなると全国各地で菜の花の便りが届くようになるよね。春爛漫ももうすぐそこまで来てるね。
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜①菜の花 菜の花
ところで、この菜の花、日本の伝統的な春の花のような顔をしてるけど、実はその昔、西アジアから地中海地方の麦畑のただの雑草だったんだ。それがシルクロードを経由して麦の栽培が東アジアに伝わると、それと同じくして移動し、中国そして日本にも伝わったらしいんだ。弥生時代にはもうすでにわが国に伝わっていたらしいよ。
原産地では、有用な作物としての認識はなかったようだけど、東アジアでは葉物野菜として重宝され、品種改良されるようになったんだ。その結果、菜の花を起源とする野菜は東アジアを中心にして、非常にバラエティに富んだ野菜のグループになったんだ。
みんなが普段よく食べている葉物野菜、すなわち白菜、小松菜、水菜、中国野菜の青梗菜、ターサイ、パクチョイ、漬け菜としての野沢菜や広島菜、高菜、和辛子をとるカラシナ、さらには日の菜や千枚漬けの聖護院蕪、赤蕪などの蕪類まで、数え上げれば切りがないほどの野菜たち。これらはみんな菜の花から改良された兄弟分なんだぞ。
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜②白菜 白菜
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜③小松菜 小松菜
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜④水菜 水菜
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜⑥青梗菜 青梗菜
普段使いする菜っ葉類で、ホウレンソウとレタス類以外はほとんど菜の花起源と言ってイイほど。どうだい、遠い昔に菜の花が日本に伝わってなかったら、今のみんなの食卓は何とも寂しいものになっていたんじゃないかな。
話のついでに、キャベツも地中海地方から伝わってきたんだけど、ブロッコリーやカリフラワー、芽キャベツ、コールラビ、それに葉ボタンもケールと言う野菜を改良して作られたんだってことは知ってるよね。
さらについでにもう一つ、大根や人参も古くに地中海地方からシルクロードを伝わってきたんだぞ。
こうやって見ると、現在、みんなが食べている野菜はほとんどが、地中海地方~西アジアが原産ってことが分かるよね。
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜⑤野沢菜 野沢菜
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜⑦聖護院蕪 聖護院大根
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜⑧蕪  蕪
菜の花、白菜、蕪、小松菜、青梗菜⑨日野菜 日野菜