レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

ウツギの仲間たち

♫ 卯の花の 匂う垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ♬
ウツギの仲間たち②ウツギの花(拡大) ウツギの花(拡大)

これはみんなもよく口ずさんだ童謡もしくは唱歌「夏は来ぬ」の一節だよね。
この冒頭に出てくる卯の花とは、もちろん、みんなもよく知っている、そう、ウツギの花だね。

ところで、ウツギという名前のついた植物がたくさんあるのを知っているかい? 代表格であるアジサイ科のウツギに加えて、同じアジサイ科のノリウツギやバイカウツギ、スイカズラ科のタニウツギやハコネウツギ、フジウツギ科のフジウツギ、ミツバウツギ科のミツバウツギ、ドクウツギ科のドクウツギ等々、挙げればきりがないほど次々と出てくるけれど、この辺で止めておくよ。
ウツギの仲間たち①ウツギ(アジサイ科) ウツギ(アジサイ科)
ウツギの仲間たち⑤ノリウツギ(アジサイ科) ノリウツギ(アジサイ科)
ウツギの仲間たち⑥バイカウツギ(アジサイ科) バイカウツギ(アジサイ科)
ウツギの仲間たち⑦タニウツギ(スイカズラ科) タニウツギ(スイカズラ科)
ウツギの仲間たち⑧ハコネウツギ(スイカズラ科) ハコネウツギ(スイカズラ科)
ウツギの仲間たち⑨フジウツギ(フジウツギ科) フジウツギ(フジウツギ科)

これらの花の名前を訊ねられたときには、「これは○○ウツギという名前なんですよ」って説明すると、まず間違いなく、「へぇ~、これもウツギの仲間なんですか? ウツギと花の形が全く違いますねぇ。」といった反応が返ってくるんだ。 そりゃあそうだよね、名前にウツギってのは付いているけど、全く血のつながりもない、親類縁者でもないもの同士なんだから、花の形が違っていて当たり前。 人はどうして、こう名前に騙されてしまうんだろうね、みんなは大丈夫かな? 人間でも、同じ名字でも赤の他人同士なんてざらにいるだろう。

じゃあ、このウツギたちはどうしてウツギと呼ばれているんだろうね。それはウツギという言葉を理解すれば簡単なこと。ウツギは漢字で書くと「空木」となるんだけど、勘のイイみんなはもう分かっただろう? そう、ウツギたちはみんな枝や幹の中心が空洞になっているのさ。そうストローのようになっているってことなんだよ。これを昔の人は空木(うつぎ)って呼んだんだね。
ウツギの仲間たち④ウツギの枝 ウツギの枝
この空洞になる特徴を利用してつくられたのが、ノリウツギの煙管(キセル)やパイプらしいんだけど、最近はほとんど作られなくなっているので、ワシも見たことはないのさ。

ウツギの仲間の中でも、特に注意しておかなくちゃならないのが、ドクウツギ。これは、トリカブト、ドクゼリと並んで、日本の3大猛毒植物の一つといわれており、この実を食べるとイチコロであの世行きだから、十分気をつけるようにな!
ウツギの仲間たち⑩ドクウツギ(ドクウツギ科) ドクウツギ(ドクウツギ科)
ちなみに、旧暦の4月を卯月っていうんだけど、これはウツギの別名である卯の花の咲く月だから、そう呼ばれるようになったんだってさ。
ウツギの仲間たち③ウツギの樹形 ウツギの樹形

朴葉味噌の朴葉とは?

みんなは、高山で有名な岐阜県の飛騨地方に行ったことはあるかなぁ?そこで旅館に宿泊すると、必ずと言っていいほど朝食に「朴葉味噌(ほおばみそ)」出てくるんだ。七輪の上に朴葉を乗せて、その上で自家製の味噌にネギや椎茸などの薬味を入れて混ぜながら焼くんだけど、これを炊きたてのご飯に乗せていただくと美味しいよねぇ。朝からいくらでもご飯が進むんだ。あ~っ、食べてくなってきたよ! いゃ~、申し訳ない、ちょっと脱線してしまったよ。
朴葉味噌の朴葉とは④朴葉味噌 朴葉味噌

さあ、本題に戻って、朴葉味噌に使われる朴葉とは、もちろんホオノキの葉なんだけど、みんなはホオノキを見たことがあるかな? ホオノキは、北海道から九州までの低山から高山地帯にまで、幅広く分布していて、六甲山系にもよく生えているので、みんなもよく目にしているはずなんだけどね。
朴葉味噌の朴葉とは①ホオノキの葉 ホウノキの葉
木の高さが30mにもなる非常に大きな落葉広葉樹で、葉も大きいけど、花も大きくて5月から6月にかけて、木の高いところの枝先に直径20cmほどのクリーム色をした大きな花を咲かせるんだ。
朴葉味噌の朴葉とは②ホウノキの花(下から見上げたもの) ホオノキの花(下から見上げたもの)
朴葉味噌の朴葉とは⑤ホオノキの花 ホオノキの花
なかなか花を間近に見ることは少ないけど、遠くから山を眺めると、大きな白い花が樹冠に点々と咲いているのを見かけることがあるよ。ホオノキは花を見てわかった人もいるだろうけど、モクレンの仲間なんだ。花もタイサンボクに似ているだろう? 花は大きくて綺麗なんだけど、何せ高いところで咲くもんだからねぇ。しかも、庭木にするには大きくなりすぎるし・・・・・。
ホオノキの葉は、大きいものでは長さが30~50cmにもなるんだけど、古代から食べ物を包んだり、調理する際に使われてきたんだ。前回のカシワの時にも話したけど、昔は「炊ぐ葉(かしぐは)」すなわち「かしは」として。この大きな葉が重宝されていたんだね。だから、昔は「ホホカシハ」と呼ばれていたようだよ。
朴葉味噌には枯れて茶色くなった葉を使うんだけど、これは落ち葉を塩漬けにして乾燥したものが火に強くて、七輪の上で焼くのに適しているからで、朴葉寿司などは、殺菌作用があるといわれている緑の若葉を使っているんだぞ。
朴葉味噌の朴葉とは③ホオノキの枯葉 ホオノキの枯葉
みんなも山歩きで見つけたら、葉を何枚か採ってきて、料理や盛付けに使うと家族に褒められるかもね。

柏餅を包むのはカシワの葉?

ちょっと時期を逸した感があるけど、端午の節句を過ぎると、柏餅をよく食べるようになるよね。みんなはもう今年お初の柏餅を食べたのかな?
柏餅を包むのはカシワの葉①柏餅 柏餅
ところで、この柏餅、かしわもちと言うくらいだから、餅を包んでいる葉はカシワの葉だってことは知ってるよね。えっ、それは知ってるけど、カシワっていう植物を知らないって?
柏餅を包むのはカシワの葉②カシワの葉 カシワの葉
柏餅を包むのはカシワの葉④カシワのドングリ カシワのドングリ
カシワっていう木は、北海道から九州まで全国に自生しているドングリの仲間なんだけど、関西では、山であんまり見かけることはないよね。しかも、庭木や街路樹としても使わないから、みんなが知らないのも無理はないかな。
柏餅を包むのはカシワの葉③カシワの樹形 カシワの樹形

さて、カシワっていう名前だけど、これは、古代に、大きな葉を土器などの底に敷いて、食べ物を炊いたり蒸したりしたところから、つけられたようなんだ。「炊ぐ葉(かしぐは)」が転じて、「かしは」になり、「カシワ」と呼ぶようになったんだよ。もちろん昔は今のカシワの木の葉だけではなく、大きな葉をいろいろと利用していたらしく、たとえば、ホオノキの葉なんかもよく使われていたようだよ。ホオノキは昔ホホカシハと呼ばれていたこともあるくらいだからね。
最近は、都市部では柏餅を家でつくる人は少なくなったけど、地方に行けば今でもよくつくられているよね。関西では近くの山でカシワの葉が手に入りにくいもんだから、カシワを使うことが少なくて、その代用として里山にたくさん生えているサルトリイバラの葉を使うことが多いよね。
柏餅を包むのはカシワの葉⑤サンキライの葉を使った柏餅 サルトリイバラの葉を使った柏餅
サルトリイバラは、関西ではサンキライ(山帰来)と呼ばれていて、表面がツルツル、テカテカしていて粘っこい餅を包むのにはもってこいの葉だよね。でも、鋭いとげがあるので、葉を採るときは十分に気をつけるんだぞ!
柏餅を包むのはカシワの葉⑥サンキライの葉と果実 サルトリイバラの葉と果実

ところで、五月五日の端午の節句に柏餅を食べる習慣は、カシワの木の葉が秋に紅葉して枯れても、枝から落ちずに冬中残っていて、翌春に新芽が育つまで葉が落ちないことから、家系が途切れないと縁起を担いだんだってさ。
ちなみに、名古屋以西では、鶏肉のことを「かしわ」って呼んでるよね。これは、鶏の羽の色がカシワの木の紅葉の色(赤茶色)に似ているから、そう呼ばれるようになったんだってさ。でも、最近の若い人は「かしわ」っていう言葉を知らないかもね。