レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第12話 りんご

「ムッシュフルーリ 緑の扉」
植物で知りたいことがあるとき、この扉をたたくと「へぇ~っ!」と納得の答えがかえってきます。白井にとって植物の知恵袋ともいえるムッシュ・フルーリ。さぁ、みどりの扉をたたいてみましょう!
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 (操さん)
「トントン!秋の深まりとともに、さまざまなりんごが店先に並んでいます。猛暑を乗り越え、今年もおいしいりんごが食べられる幸せに感謝ですね。身近で何気ない存在だけど、ちょっとくたびれた時、一口食べるとなんだか元気がでるんです。大好きなりんごの話を聞かせてくださーい。」

 

  (ムッシュ・フルーリ)
秋も随分深まってきて、日本が誇るりんごの王様「ふじ」も随分出回るようになってきたね。さて、今回は操ちゃんのお願いで、りんごについて薀蓄を語ることにするよ。

みんなは、「ワリンゴ」っていう名前を聞いたことがあるかい? 「西洋リンゴ」に対して「和りんご」ってい言うことなんだけど、もともとのりんごの野生種は、コーカサス北部地方らしいんだ。それが平安時代には中国を経由して日本に入ってきてたんだな。江戸時代頃までは、主に仏事用として利用されていて、大きさも直径が3~4cmくらいとピンポン玉よりも小さかったんだな。この古くから日本で栽培されていたものを「和りんご」と呼ぶようになったのは、江戸時代の末期に西洋から今のリンゴに近いものが導入され、それを「西洋リンゴ」と呼ぶようになったからさ。日本で初めて西洋リンゴを栽培したのは、あの越前福井藩主だった松平春嶽で、文久2年(1862年)にアメリカ産のリンゴの苗を入手して、江戸の福井藩の下屋敷内で栽培していたらいいんだ。また、それよりちょっと前に、加賀藩の下屋敷で栽培されていたという記録もあるらしいんだ。

明治4年に、当時の政府がアメリカから75品種もの苗木を導入し、北海道に植栽したんだ。それらが中心となって、明治20年代頃から本格的に日本国中に西洋リンゴが普及したんだぞ。今では、それらの品種を基にして、日本独自の品種が育成され、国内で約200品種、世界中では1万品種ほど栽培されていると言われているんだぞ。

「 ふじ」(有袋栽培)
  「サンふじ」無袋栽培」
さて、こんなに多くの品種があるんだけど、世界で最も生産量の多い品種を知っているかな? それは、日本が世界に誇る「ふじ」っていう品種なんだ。みんなも良く知っているよな。 もちろん海外では「Fuji」って標記されるんだけどな。 同じ「ふじ」っていう品種を無袋栽培したものが「サンふじ」という名前で流通しているのは知っているかい? 無袋栽培って何かって? えっ、知らないの!? じゃあ、説明してあげようか。

りんごは、花が終わって果実がある程度大きくなったら、果実の色を鮮やかにして商品価値を上げるために、果実一つ一つに紙で作った袋を被せるのが一般的な栽培法なのさ。
  リンゴの花
でも、袋を被せないで、栽培したほうが果実に日光が多く当たり、見かけは悪いけど糖度やビタミンCが高くなるんだ。だから、外見より中身を重視した、袋掛けをしない栽培方法を無袋栽培といって、農家にとっても作業の負担が軽減されるので、近年増えているのさ。この無袋栽培で生産された「ふじ」を、袋掛けをしたものと区別するため、「サンふじ」という名前で出荷するようになったってことなんだ。だから、「サンふじ」の方が見かけは悪いけど、糖度が高く美味しいうえに、随分お安いので庶民の味方だな!みんなも一度食べ比べをしてみるといいよ!
 有袋栽培の状況
 無袋栽培の状況

ところで、りんごの産地といえば? そりゃあ青森とか長野だろうって? まあ、その通りなんだけど、実は、わが兵庫県にも小さいながらも産地があるのを知っているかな? りんごの栽培は寒いところっていうイメージがあるけど、西日本の温暖地でも結構育つもんなんだぞ。県内で最大の産地は、宍粟市波賀町の原地区で、約3.6haの面積の園地に10品種1,200本ものリンゴが植栽されているんだ。ここでは、8月下旬~11月下旬までりんご狩りもできるから、ぜひ訪れてみるといいよ。このほかに、神鍋高原や、神戸市のフルーツフラワーパークでもリンゴを栽培しているぞ。本場の青森や信州産のりんごもイイけど、たまには県内産のりんごも食べてみてほしいな。

さて、ついでにもう一つ薀蓄を述べさせてもらうかな。みんなが食べているりんごだけど、あれって本当の果実じゃないってことは知ってた? モモは本当の果実なんだけどね。えっ、どう言うことかって?
 りんごの果実
果実には、その構造上2種類に分けられていて、果実の大部分が成熟した果皮からなる場合を真果(しんか)、大部分が果皮以外からなる場合を偽果(ぎか)(仮果、副果とも言う)と呼んでるんだ。
別図を見てもらうとよくわかると思うんだけど、りんごは花が咲いているときの子房の部分が、果実になると、みんなが食べない芯の部分になるんだよ。みんなが食べているのは、花弁や顎弁、それに雌蕊や雄蕊がくっついている元の部分、すなわち花托というものが、肥大して大きくなったところなんだ。
それに対して、モモは花が咲いているときの子房の壁が肥大して大きくなったもの(これを果皮という)なので、果実そのものを食べていることになるんだぞ。どうだい。また一つ賢くなったね。
真果と偽果(仮果)出典:小学館「デジタル大辞泉」

さあ、今日は頭をよく使ったので、ここらで操ちゃんの料理が食べたくなったね。りんごを使った料理のメニューは、きっと県内産のりんごを使っていると思うぜ! ねえ、操ちゃん?

 (操さん)
「へぇ~、兵庫県でもたくさん作られてるんですね。りんごといえば、信州・長野や、青森、岩手のことばかり気になっていました。りんごはそのまま食べてもおいしいけど、焼きりんごやアップルパイなど焼き菓子にもよく使われます。お家にあるりんごとバナナで作るお菓子をご紹介します。さて、お茶でも入れましょうか。」
「バナナップルケーキ」のレシピはこちら>

 

第11話 生しいたけ

  (操さん)
「トントン!すっかり秋らしくなりました。秋はきのこの季節。そしてきのこは旨みの宝庫!松茸、しめじ、舞茸、えのきにマッシュルーム・・・いろんなきのこがあるけれど、一番身近なきのこと言えば、やっぱりしいたけかなぁ。今回はしいたけのこと、いろいろ教えてくださいな。」

 (ムッシュ・フルーリ)
シイタケは日本を代表する食用キノコで、英語でもShiitakeと呼ばれていて、世界に通用するんだ。国内の生産量はエノキタケやブナシメジに次いで3番目に甘んじてるんだけど、生産額はキノコ中最大なんだぞ。ということは、単価が高いってことだな! シイタケは,生食する「生しいたけ」だけでなく、乾燥させた「干ししいたけ」としての利用もすごく多い
んだ。シイタケは乾燥させることでうまみと香り成分が飛躍的に増えることが知られていて、うまみ成分として有名な昆布に含まれるグルタミン酸、鰹節に含まれるイノシン酸と並んで、干しシイタケに多く含まれるグアニル酸が、三大うまみ成分といわれているんだ。
  (野生のシイタケ)

さて、バーベキューといえば、お肉と野菜はもちろんのこと、生しいたけは絶対はずせないよね。えっ!? 生しいたけは好きじゃないって? そうなんだよな。シイタケはピーマン、ニンジンなどと同じように、風味や食感に癖があって、好みが分かれる食品の一つなんだってさ。そう、好き嫌いがはっきり分かれるってことさ。収穫したばかりの肉厚の生しいたけの笠を裏返して炭火で焼いて、バター一欠けに醤油をチョット垂らせば最高に旨いんだけどなぁ。

ところで、シイタケはマツタケと違って人工的に栽培できるキノコなんだけど、どの様にして栽培してるか知ってるかい? 今、市場に出回っているキノコ類のほとんどは、菌床栽培といって、オガクズなどの木質基材に米糠などの栄養源を混ぜた人口の培地で栽培されているんだ。シイタケはもちろん、エノキタケ、マイタケ、ブナシメジ、ナメコにエリンギなど、ほとんどのキノコがそうなんだけど、施設内で温度と湿度そして光を制御してやれば年中栽培できるから、工場生産と同じように、一定品質で一定量を計画的に生産できるので、みんなが求めやすい低価格で提供できるんだぞ。

(菌床栽培のしいたけ 出展:日本産・原木乾しいたけをすすめる会)

この菌床栽培に対して、もう一つの栽培方法の原木栽培っていうのがあるんだ。これは、天然の木を使って栽培する方法で、キノコの種類ごとに適した樹木を伐採し、その枯れた丸太に直接キノコの菌を植え付けるんだ。今では、ほとんどシイタケだけがこの栽培方法で生産されているんだけど、高度な技術に加え手間暇がかかるため、今では原木栽培をする生産者は随分と減ってきているんだ。でも、原木栽培のしいたけは、肉厚で味も香りも濃くて食感も全く別もんだぜ! もし、食べたことがないのなら、是非、一度は味わってみてほしいな。きっとその美味しさにびっくりするから!

(収穫間近の原木栽培のしいたけ 出展:日本産・原木乾しいたけをすすめる会)
今では、食品表示法に基づいて、「菌床栽培」もしくは「原木栽培」と表示しなければいけないようになっているから、買う時にしっかりと表示を確認するんだぞ。まぁ、原木栽培のシイタケは、チョットお高いから直ぐに判るけどね。

兵庫県内でも、原木栽培をしている生産者が僅かながらにいらっしゃって、特に、北摂地域には20数人の生産者が「北摂原木しいたけ振興協議会」を組織して、ほんとうのしいたけの味を守っているんだ。原木栽培に使うほだ木は、近隣の里山からクヌギやコナラなどを伐採してくるんだけど、このような作業が里山の環境を維持していることにもなっているんだぞ。

(原木栽培のしいたけ 出展:日本産・原木乾しいたけをすすめる会)

どちらにしても、この生しいたけはめっちゃ旨い。 こりゃぁ、生しいたけを使った操ちゃんの料理が楽しみだな!

(操さん)
「原木しいたけは確かに一度は味わっておきたいおいしさ。生産者の手間ひまを思います。シイタケって日本語も英語も同じ・・・とは知りませんでした。きっと世界中にその土地の特有のきのこがあるんだろうなぁ。なんだかきのこをたっぷり食べたくなってきました。」
「きのこたっぷりビーフストロガノフ」のレシピはこちら>

第10話 れんこん

(操さん)
「トントン!空が高いなとか、夕暮れが早いなと思うと、秋においしくなるものをふっと思い出します。夏の終わりから秋にかけて出始める真っ白な新レンコンのシャキシャキと心地よい食感は今味わっておきたいなぁ。今回は、時期によって食感が変わるれんこんのこと、いろいろ教えてくださいな。」

(ムッシュ・フルーリ)
操ちゃん、今年の夏は、異常なほど暑かったねぇ。体調を崩さなかったかい? でも、お盆も過ぎ、9月の声を聴くと、酷暑続きだった日本列島にも、さすがに秋の気配がここそこに感じられるようになったね。

お盆には、仏花として霊前に供えられるハスの花だけど、9月にもなると、「れんこん」の収穫が本格化するんだよな。
ところで、みんなは「れんこん」が、ハスという植物の地下茎だってことくらい知ってるよな? そんなの常識だって? そりゃぁそうだな。 花を観賞するハスとれんこんを収穫するハスは品種が違っていて、これを区別するために、花を観賞するハスを「花蓮(はなばす)」って呼ぶこともあるんだ。もちろん花蓮にもれんこんはできるけど、大きさや食味が適さないんだな。

ハスは、インド原産といわれていて、仏教では泥水の中から生えてきて、非常に美しい清廉な花を咲かせることから仏様の象徴とされ、如来像の台座はハスの花をかたどった蓮華座となってるんだ。また、善い行いをした人は、死後に極楽浄土に往生し、同じ蓮華の上に生まれ変わって身を託すという思想があって、「一蓮托生」という言葉の語源となっているんだぞ。

このハスという名前だけど、昔は「はちす」って呼ばれてたんだ。「はちす」とは、「蜂巣」すなわち蜂の巣のことで、ハスの花の「花托(かたく)」(花柄の先端で、花弁やおしべ,めしべがつく部分のことを言い、ハスでは花の中央にある)が、蜂の巣の形に似ていることからそう呼ばれたらしいんだ。その「はちす」が訛ってハスになったのさ。

さて、そろそろ、食用のれんこんの話をするかな。 ハスは、日本には奈良時代に中国から入ってきたらしいけど、現在日本で栽培されている美味しいれんこんは明治以降に改めて中国から導入された品種を改良したものなんだぞ。日本の最大の産地は茨城県で、国内生産量の半分のシェアを占めているんだ。その次が徳島県、次いで佐賀県や山口県と続くんだけど、わが兵庫県にも小さいながらもれんこん産地があって、姫路市南西部の大津区周辺で大正時代から栽培されてきたんだ。「姫路のれんこん」というブランドで出荷されていて、白くてぽっちゃりした形をしていて、夏から秋に穫れる若いれんこんはシャキシャキしていて生でサラダにもよく、厳冬期に穫れるのはもちもちとして、これまた絶品! れんこん大好き!!
ところで、れんこんには栄養がたっぷり詰まっているんだけど、まずは、ビタミンCが豊富に含まれていて、デンプンに守られているので、加熱しても壊れにくいのが特徴なんだ。その他、ビタミンB1・B2に食物繊維、カリウム、鉄分、さらにはポリフェノールなど、たくさんの栄養素が含まれている素晴らしい食品なんだぞ。

ところで、れんこんを切るとねっとりとした糸を引くよね。これは、れんこんに含まれる「多糖類」というもので、同じくねばねばしている山芋やオクラ、モロヘイヤにも含まれているんだ。この多糖類には消化を助ける働きがあり、さらに細胞を活性化させて老化を防いでくれるという働きもあるんだぞ。どうだい、れんこんはすごい能力の持ち主だろう?
これだけの栄養素を含んでいるんだから、あとは料理の腕次第だな、操ちゃん!

さあ、ついでにもう一つ。れんこんには穴が開いているよな。大体大きな穴が10個あるようだけど、どうして穴が開いているか知っているかい?

この穴は、水上につきだしている葉っぱの中央部分とつながっていて、空気の通り道になっているんだぞ。水中では、根から酸素を吸収することが難しいので、この穴を通して根に酸素を送っているんだ。この仕組みを利用して、今でも、象鼻杯(ぞうびはい)といって、ハスの葉に入れたお酒を葉柄から吸い込んで飲むという行事が行われてるんだ。ハスの葉を手に入れて一度試してごらん!

(操さん)
「象鼻杯なんて風流ねぇ。シャキシャキしているのに旨みが感じられて、ねばりもあるれんこん。季節を追いかけながら、部位を変えて味わうと、なおのこと面白い素材です。すり下ろしてだんごにしても、ただ焼いてもおいしいんです。ムッシュ・フルーリにもぜひ味わってもらいたい二つのレシピをご紹介します。」

「れんこん団子」レシピはこちら> 

「れんこんのフライパン焼き」レシピはこちら>

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