レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第3話 チューリップ

「ムッシュ・フルーリの花探検 in フラワーセンター」
吾輩、ムッシュ・フルーリは、実は、 何を隠そう兵庫県立フラワーセンターという植物園の園長なんだ! 今回からは、我がフラワーセンターが誇る4,500種類にも及ぶ膨大な植物コレクションの中から、 その季節ごとに咲くとっておきの一品を紹介していくぞ!  栽培が難しくて国内では滅多に見ることのできない花、 形が奇妙で花らしくない花、普段何気なく目にしているけど、実はこんな変わった性質がある花、 そして世界中でフラワーセンターでしか見ることのできない植物などなど、次々と興味深い花たちを紹介していくから、楽しみにな!

第3話 チューリップ
3月の声を聴くと、みんなもすっかり春のうきうき気分になってくるんじゃないかな?。さあ、春の兵庫県立フラワーセンターといえば? そう、誰しもが頭に浮かべるチューリップまつりが、3月16日から始まるんだ。そこで、今回はチューリップの話をしようか。
チューリップは、春を彩る代表的な花で、チューリップを知らない人はいないくらい、春の花として浸透しているよね。これだけみんなに知られているポピュラーな花なのに、意外とその生い立ちは知られていなんだよなぁ。みんなは、チューリップの生い立ちを知っているかい? じゃあ、チューリップの原産地はどこかな? ほら、みんな言葉に詰まったね。
さあ、チューリップといえば、みんなはオランダを思い浮かべるよね。フラワーセンターでも、チューリップが咲き誇る園内で風車をバックにオランダ衣装を着て記念撮影するのが大好評。原産地がオランダだって思っている人もいるくらいだもんね。確かに、オランダはチューリップの球根の生産地としては世界一だけれども、オランダに野生のチューリップは存在しないんだぞ。
 兵庫県立フラワーセンターのチューリップ

ヨーロッパにチューリップが紹介されたのは、16世紀の半ばで、当時のオスマントルコにより、ベルギーに伝わったらしいんだ。その後、オランダに伝わったチューリップはそこでどんどん品種改良が進み、17世紀前半には、のちに「チューリップ狂(Tulipomania)」と呼ばれている、空前のチューリップ熱の高まりがあったんだ。ヨーロッパ中で珍しい花色や花型の品種が投機対象になり、球根1個が大きなビール工場と交換されたり、数万フランで取引された記録が残っているんだ。でも、こんなバブルは長続きせず、その後、大暴落して、恐慌に見舞われ破産者が続出したので、時のオランダ政府が清算機構を作って、収めたらしいよ。まあ、そんなこんなで、オランダにはチューリップの栽培が定着して、今や世界一のチューリップ産地として君臨しているんだ。

さて、チューリップの原産地だけど、野生のチューリップは地球上に80種ほどあって、そのほとんどがトルコから中央アジアにかけて自生しているんだ。特に多いのは、カザフスタン、ウズベキスタン、イラン、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、キルギス、アルメニア、アフガニスタンかな。えっ、そんな国はどこにあるかわからないって? じゃあ、いい機会だから、世界地図を広げて探してごらん。そのほかにも、スペインやイタリア、ギリシャ、モロッコなど、地中海沿岸地域にも僅かに自生している種があるんだ。まあ、ざくっと言って、主に中近東から中央アジアが原産地っていうことだね。

カザフスタンのチューリップの自生地

ところで、チューリップの園芸品種はいったいどのくらいあると思う? オランダ王立球根生産者協会(KAVB)の品種登録サイトには6519品種が登録されているんだけど(2018年3月現在)、兵庫県立フラワーセンターでは、そのうちの約500品種のチューリップを園内に植えているんだ。それほどたくさんある園芸品種は、花の咲く時期や花の形などにより分類されていて、「オランダ王立球根協会」により制定された分類法が世界的なスタンダードになっているんだ。 みんなは、園芸品種名の横に、SEやDHなどのアルファベットの略語が書かれてあるのを見たことないかなぁ? その記号が15に分けられた分類記号なんだぞ。(別表参照)フラワーセンターの品種展示では、この記号が必ず園芸品種名の横に書いてあるから、よく注意して観察するんだぞ。
 青い色素を持った原種のチューリップ

因みに、チューリップ(Tulip)っていう名前だけど、トルコ人からヨーロッパに伝えられた際に、何を勘違いしたのか、トルコ人のかぶっていたターバン(チュルバンtülbend)と聞き違えたらしく、それが訛ってTulipになったらしいよ。

 操の「へぇ~!」
フルーリさん!ウチにもここ20年ぐらい毎年咲いてくれるチューリップがあります。他では見たことがなかった花だったのですが、律儀に毎年春を知らせてくれるのです。フルーリさんのお陰で今日その花がカザフスタンの自生種と分かりました。なんだか、うれしいものですね。

「チューリップまつり」を見に行こう!!
兵庫県立フラワーセンターのHPはこちら>

◇「チューリップの15分類」(オランダ王立球根協会)
開花時期によって超早生(3月下旬~)、早生(4月上旬~)、中生(4月中旬~)、晩生(4月下旬~)の4つに大別し、さらに、花の形や大きさなどを考慮し15通りに分類されている。
(別表)

分類 記号 開花期 特 徴
SE 早生 (Single Early Tulips)(一重早咲き系)深いカップ状の小さめで丸弁の花びらを持ち8cmほどの大きさで、早春に花を咲かせます。15~50cmの草丈に成長し、茎は強くガーデン向きの優れたグループ
DE 早生 (Double Early Tulips)(八重早咲き系)二重の鉢状の12-13cmの大きさで牡丹に似た花である。早春に咲き、花持ちが長く続きます。25~40cmの草丈に成長し、ガーデンやコンテナガーデンに向いています。
T 中生 (Triumph Tulips)(トライアンフ系)大きく単一のカップ型の花で、春に花が咲き長く咲きます。35~60cmの草丈に成長し、切花向けに多くの品種が作られています。
DH 早生 (Darwin Hybrid Tulips)(ダーウインハイブリッド系)卵型の非常に大きく鮮やかな色の花が特徴です。茎は強く50~70cmの高さに成長します。
SL 晩生 (Single Late Tulips)(一重遅咲き系)楕円形または卵型の花で、45~80cmの高さに成長します。背が高いためボーダーガーデンによく利用されます。
L 晩生 (Lily-Flowered Tulips)(ユリ咲き系)長い花の尖った花びらを持ちます。晩春に花を咲かせ、50~65cmの高さに成長します。
FR 晩生 (Fringed Tulips)(フリンジ系)SL系統に似ていますが、花弁の縁が房状になっています。晩春に花を咲かせ、40~80cmの高さに成長します。
V 晩生 (Viridiflora Tulips)(ビリディフローラ系)グリーンチューリップとも呼ばれます。SL系統に似ていますが花びらは部分的に緑色で晩春に花を咲かせます。25~60cmの高さに成長します。
R 晩生 (Rembrandt Tulips)(レンブラント系)花びらにストライプの模様が入る花を咲かせます。45~65cmの高さに成長します。
10 P 晩生 (Parrot Tulips)(パーロット系)大きい花でフリルやツイストの花びらを持ち、50~65cmの高さに成長します。茎が弱いため大きな花を支えることができないため支柱が必要です。
11 DL 晩生 (Double Late Tulips)(八重遅咲き系)牡丹に似た大きな華やかな花を持ちます。晩春に花を咲かせ、40~60cmの高さに成長します。茎が弱いものもあり、風雨の中では大きな花を咲かせません。
12 K 超早生 (Kaufmanniana Tulips)(カウフマニアナ系)花は長く2色の花を持ち春一番に花を咲かせます。10~25cmの高さに成長し、ロックガーデンやコンテナが理想的です。
13 F 超早生 (Fosteriana Tulips)(フォステリアナ系)大きく長い花が咲きます。早春に咲き20~40cmの高さに成長します。植栽のアクセントに適しています。
14 G 超早生 (Greigii Tulips)(グレイギー系)紫茶色や栗色に葉脈または斑点の模様の葉が楽しめます。早春に花を咲かせ、23~50cmの高さに成長します。
15 M 超早生~ (Miscellaneous)(原種系)野生系のチューリップ、通常のものよりも小さい花で繊細なイメージです。7.5~45cmの高さに成長します。早春に咲くものが多いです。

 ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

第2話 ネペンテス・ペルヴィレイ

第2話 ネペンテス・ペルヴィレイ
今回は新企画の第2弾となるんだけど、早々に我が兵庫県立フラワーセンターが、世界に誇るコレクションの一部を紹介するとしようか。本園は、昭和51(1976)年の開園当初から春のチューリップで有名なんだけど、実は、知る人ぞ知る、今や食虫植物のコレクションでは、日本一、いや世界トップクラスなんだぞ。なかでも、ネペンテス属(ウツボカズラ属)では、世界中の数多くの植物園のなかで、何とフラワーセンターでしか見ることのできない種類があるんだ。それが、標題にある「ネペンテス・ペルヴィレイ」という種類なんだ。
 (ネペンテス・ペルヴィレイ)

ところで、みんなはネペンテスっていう食虫植物は知っているかい? 和名ではウツボカズラって呼んでいる食虫植物の仲間なんだけどね。えっ、それも聞いたことがないって?
しょうがないなぁ、それじゃあ、基本的なところから説明するとしようか。

まず、食虫植物とは、読んで字のごとく「虫を食べる植物」なんだけど、世界中に600種類以上もあって、非常に変化に富んでいる植物のグループで、共通している点は「虫を食べる」っていうところくらいかな。食虫植物の生えている環境を見てみると、湿原や乾燥した岩肌、もしくは湿った荒野など、植物が必要とする栄養素が非常に乏しいところなんだ。そんなところでは、光合成によってエネルギーを生産している植物でも、栄養分が不足してまともに生育できないんだな。そこで、考え付いたのが、昆虫などの小動物を栄養源にすることなんだ。これを最初に考えた奴は偉いよなぁ。それまで、食べられるばかりだった動物を食べてやろうっていうんだから、逆転の発想だな。その発見以降、何十万年という長い年月をかけて虫を獲る仕組みを進化させたのが、食虫植物というグループなんだな。自分たちが生存競争に生き残っていくための苦肉の策の結果っていうわけだな。
 (ネペンテス・ペルヴィレイの捕虫袋)
さて、その食虫植物の中でも、種類が多くて形が面白いものの代表がネペンテスなんだ。和名はウツボカズラって言うんだけど、海にいるウツボとは何の関係もないぞ。ウツボカズラは「靫葛」という字を書くんだけど、これでも意味が解らないかな? ウツボすなわち「靫」とは、「矢を携帯するための筒状の容器」で、武士が戦の際に肩からかけていたものなんだ。捕虫袋(虫を落とし込む袋状の葉)の形がその容器に似ていて、葛すなわち蔓状に伸びる植物なので、ウツボカズラって言うことなのさ。

マレー半島やボルネオ島、スラウェシ島などを中心とした東南アジアに約100種類が自生しているんだけど、本園には野生種と交配種を含めて200種以上のコレクションがあるんだぞ。中でも今回紹介するネペンテス・ペルヴィレイっていうのは、マダガスカルの北に1,000km以上離れた「インド洋の真珠」と呼ばれているセーシェル諸島に自生していて、栽培が非常に難しく、世界中でフラワーセンターだけがその栽培に成功しているんだ。だから、現地以外で正常に生育している姿を見ることができるのは、世界広しといえどフラワーセンターだけなんだぞ。どうだい、凄いだろう(自慢)! 是非、フラワーセンターまで足を運んで、実物を見てほしいなぁ。園内の温室内にある食虫植物室で年中展示しているのでいつでも見られるぞ!

(フラワーセンターの食虫植物室内で生育しているネペンテス・ペルヴィレイ)
〈このような自生地に近い状態で観察できるのはフラワーセンターだけ!〉

ここで、ちょっと宣伝しておきたいのが、このネペンテス・ペルヴィレイの栽培技術を確立したのが、食虫植物マニアの間で神と崇められている土居寛文さんなんだ。本園は植物だけでなく、素晴らしい人材にも恵まれているんだぞ。

さてここで、ネペンテスの虫を獲る巧みな仕組みついて説明しようか。ネペンテスは落とし穴式と呼ばれる補虫方式で虫を獲るんだけど、葉の先が蔓状に伸びてその先端に捕虫袋と呼ばれる「虫を落とし込む袋状の葉」を付けているんだ。
 (ネペンテスの捕虫袋)
その袋の上部には甘い蜜を出して昆虫を誘惑する蓋状のものがあり、袋の入り口には鼠返しがあり、その内側に下向きの歯状のものがあって、袋内に落ち込んだ昆虫が出られないようになっているんだ。しかも、袋の内壁には下向きのごく細い毛が密生していて、ツルッツルなんだぞ。
 (捕虫袋の入口にある鼠返し緑歯)
落ち込んだら最後、出るに出られず、袋の底にたまっている強力な消化液の中でじわじわと溶かされるんだ。
これぞ、本当のハニートラップだな。

こんな複雑で不思議な、そして恐ろしい仕組みを考え付いたネペンテスを、是非フラワーセンターに見に来てほしいな、園長いやいやムッシュ・フルーリは待ってるぞ!

操の「へぇ~!」
虫を落として溶けるの待って・・・。うわぁ~なんだか恐ろしい。同じ花と呼ばれるのなら、できれば「かわいい」「きれい」「いい匂い」といわれる花になりたいな。もし花と話しができたら、この「へぇ~!」と思う気持ちを伝えたり、ネペンテス・ペルヴィレイの思いに耳を傾けることもできるのに・・・なんて思いながら見せていただきました。この花のそばにいると蚊などから人を守ってくれるいいことが待っているのかしら・・・。

「ネペンネス・ペルヴィレイ」を見に行こう!!
兵庫県立フラワーセンターのHPはこちら>

ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。バックナンバー「ムッシュ・フルーリ緑の扉」にも植物の知りたいコトが満載です。

第1話 スミシアンサ 

新企画の初回を飾るのは、スミシアンサ!
この花の名前を聞いたことのある人はいるかな? 多分これを読んでるみんなはほとんど聞いたことがないんじゃないかなぁ。えっ、フラワーセンターで見たことがあるって? さすがムッシュ・フルーリのファンだけあって、フラワーセンターに来てくれてるんだね。
そう、国内ではあまり見ることのないスミシアンサだけど、兵庫県立フラワーセンターでは、11月の下旬ころから年明けにかけて、温室内で見ることができるんだぞ!

さて、スミシアンサっていう花は、イワタバコ科に属する植物で、メキシコやグァテマラに自生していて、地下にアキメネスと同じような鱗状の根茎(すなわち球根)を持つ多年草なんだ。野生種は7~9種ほどあるといわれていて、それらを交配して園芸品種も作られているのさ。フラワーセンターには、独自に育成した園芸品種なども含めると、30種類程度を栽培しているんだぞ。

5~6月に球根を植え付けて、夏から秋の間に生長した茎の先端に穂状の花序を付けて、初冬になるとベル状の花をたくさん咲かすのさ。写真を見てごらん。どうだい、なかなか可愛くて綺麗な花だろう? しかも、葉に濃い赤銅色の紋様が入るので、花の無いときも観葉植物として利用できるんだ。
 
さて、スミシアンサを育ててみたくなったかな? でも、なかなか手に入らないのがこの植物の短所かな。花の咲く時期になると、フラワーセンターの花売店で少しだけれど販売しているから、本当に欲しい人はチャンスを逃すんじゃないぞ!
 

栽培方法は、近縁種のアキメネスとほほ同じなんだけど、アキメネスを栽培した人もそんなに多くはないだろうね。5月頃に鱗状根茎(すなわち球根)を植えこんで、半日陰で栽培すると、芽が出て順次葉を広げていくよ。ちょっと暑がるので、最近の真夏は明るい日陰の方がいいかな。秋の彼岸も過ぎ、秋風が吹くようになると茎の先端に蕾が見え出して、早ければ11月中旬ころから咲き始めるぞ。花が咲き始めたら屋内の明るい窓辺に取り込んで観賞しよう。花も終わるころになると、外は随分寒くなってくるから、乾かし気味していると、葉や茎が枯れてくるので、枯れた地上部を根元で切って、鉢のままで春まで室内で管理しよう。水やりを止めて5℃以上で保管しておき、来春に鉢の土を掘り起こすと、株元に鱗状根茎がいくつかできているから、それを一つずつ切り離して、また新たな鉢に植えこむんだ。これで一年の栽培サイクルが完了だぞ。分かったかな?
 

 操の「へぇ~!」
スミシアンサは花の形がとってもエレガント!
私は花が大好きなんだけど、大きな蘭や菊、花の形ひとつとってもそれぞれの形には美しいだけではなく、何かの役割があるのかなぁ~なんて、いつも不思議に思えてきます。そういえば虫を食べる花もあるんですよね、フラワーセンターには。そこでしか見られない花がきっとたくさんありそう。これからの花探検が楽しみです。

「スミシアンサ」を見に行こう!!
兵庫県立フラワーセンターのHPはこちら>

 ムッシュ・フルーリは白井にとって緑の知恵袋のような存在。
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