レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第3話 山の芋

「ムッシュ・フルーリの小さなお話のタネ」
ムッシュ・フルーリは植物にとても詳しい白井の知恵袋ともいえる方。知っているだけで道端の草花や公園の並木など見慣れた季節の風景がキラリと輝く、楽しいお話のタネをどうぞ。
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(操さん)
「トントン!山の芋は栄養たっぷりで、そのおいしさをもっとたくさんの人に知ってもらいたいなぁと思っている食材のひとつ。山の芋ならではの粘りも魅力です。
山の芋はごろんと丸ごと1個売り、値段も少しお高め・・・、そんなこともあって家庭料理として使われる機会が少ないのが残念。山の芋のこともっと知りたいので、いろいろ教えてくださいな」

(ムッシュ・フルーリ)
炊きたての麦飯に出汁で伸ばした旨味たっぷりのとろろをたっぷりとかけて、ズズズーッと口の中に流し込む至福の一瞬、あ~ぁっ、麦とろ飯なら何杯でもお代わりできそう。みんなもとろろは大好きだよな。
麦とろ飯にとろろ汁、山かけ蕎麦など、このとろろは、山の芋を摺り下ろしたものを調理したものだけど、今、みんなが頭の中で思い描いた山の芋とはどんな芋だろう?
長いの、丸いのそれとも平べったくて掌型のもの? そう、山の芋と一口に言っても地域によって形や色、そして摺り下ろしたときの粘りの強さなど、いろんな種類があるんだぞ。

さて、植物学的に「ヤマノイモ」といえば、日本の山に自生しているもので、みんなが「自然薯(ジネンジョ)」と呼んでいるものなんじゃ。最近では畑で栽培した真っ直ぐなものが出回っているけど、山に自然に生えてるものは、細くて長くてグニャグニャ曲がっているから、堀取るのが大変なんだな。
 ヤマノイモ(自然薯/ジネンジョ)
でも、この自然薯は出回っている量が極端に少ないので、みんなが良く目にして食べているのは、関東では「いちょう芋」や「やまと芋」、関西では「丹波山の芋」や「つくね芋」などと呼ばれている「山の芋」じゃないかな。
イチョウ芋
じつは、この「ヤマノイモ」という山に生えている植物と、みんなが実際に食べている「山の芋」は全く違う植物だってのは知っていたかな? 「いちょう芋」に「つくね芋」、「丹波山の芋」に「大和芋」、それに加えて「長芋」と言う名前で売られている芋は、すべて同じ植物から改良されたもので、その野生種は日本には自生していなくて、中国原産だと言われているんじゃ(これも定かではないようなんじゃがな)。日本に元々自生している「ヤマノイモ(自然薯)」は、ほとんど人工的に品種改良が成されず、海外から導入された「山の芋」が全国に普及して地域独特の品種に改良されているんだぞ、面白いなぁ。ひょっとしたら、昔の日本人は、海外から「山の芋」が導入される以前には、野生の「ヤマノイモ」を利用していなかったのかもしれないな。
 長芋

さあ、全国各地でそれぞれ独特に改良された「山の芋」だけど、兵庫県民ならやっぱり「丹波山の芋」が一押しだよな。丹波地域で「山の芋」の栽培が始まったのは、江戸時代の初期だと言われてるんじゃが、栽培が難しく、凸凹した歪な芋だったようじゃの。現在栽培しているほぼ丸い形の品種は、兵庫県の北部農業技術センターの研究員が形の良いものを選抜して確立した品種で、元種はいつもそこから供給しているんじゃぞ。
それでもやはり栽培管理が難しく、形と味の良いものを生産できる農家は限られているんじゃ。だから、地元では技術研修会を開いたりして、栽培技術をしっかりと伝承していけるよう、地域を挙げて努力しているんだな。
 丹波山の芋

さて、この「丹波山の芋」、摺り下ろしたときの粘りは凄くて、摺り鉢で下ろすと鉢を逆さまにしても落ちてこないほどの究極の粘りなんじゃ。これを出汁で伸ばすと旨味たっぷりのとろろが完成、麦飯にかけたり蕎麦にかけたりすると最高じゃな。また、摺り下ろさずに薄く切ってポン酢やわさび醤油をかけるなど、生で食べるとその独特の風味が楽しめるぞ。さらに、摺り下ろしたとろろを弱火にかけて、日本酒でゆっくりと伸ばしていくととろろ酒となり、それを飲むと風邪の予防にもなるとか。

さて、今回、白井先生はどんな山の芋の料理を紹介してくれるのかな?

(操さん)
「さすがムッシュフルーリ!山の芋のおいしい食べ方をたくさんご存じですね。シンプルに食べるのもおいしい山の芋。身近な食材としてどんどん試してほしいなぁ。私からは『野菜のおとし焼き』をご紹介します。山の芋のふわっとした食感を楽しんで。」
野菜のおとし焼き レシピ

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