レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

第28話 柿渋の不思議

「ムッシュ・フルーリの小さなお話のタネ」
ムッシュ・フルーリは植物にとても詳しい白井の知恵袋ともいえる方。知っているだけで道端の草花や公園の並木など見慣れた季節の風景がキラリと輝く、楽しいお話のタネをどうぞ。
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これは美味そうだと思い、かぶりついた途端、口中にへばり付くような渋みに顔がゆがんでしまう。こんな経験のある人は、それ相応にお年を召した方くらいだろうか? というのも、悲しいかな最近の若い人は柿そのものを食べなくなっているようだね。
さて、柿には甘柿と渋柿があることは、このコラムを楽しみにしてくれるみんななら当たり前のことだよね。しかも、渋柿の持つ渋みという物は、タンニンという化学物質だってことも知っているよね。じゃあ、渋柿を食べるときに、みんながやっている渋抜きとは、渋みの張本人であるタンニンをどうすることか知っている人はいるかな?ここまでくると、知っている人は急に少なくなってくるよね。じゃあ、説明してみようか。
渋みを感じさせるタンニンは水に溶けやすく、柿の果肉や果汁にたっぷりと溶け込んでいるので、簡単には取り除くことはできないんだよ。じゃあ、渋を抜くとはどういうことなのかって? 僕たちが渋柿を食べて渋みを感じるってことは、果肉や果汁の中にある水分に溶けているタンニンを直に味わうからなんだよ。ところが、ある処理を施すことによって、水に溶けていたタンニンが水に溶けない形に変わってしまうんだ。水に溶けなくなるとどうなるのかって? 舌がタンニンの味を感じなくなるってことさ。すなわち、渋みを感じなくなり渋柿は甘柿に変身するんだよ。
タンニンを水に溶けにくくするには、アセトアルデヒドという化学物質が必要なんだよ。全然なじみのなさそうな物質だけど、実は結構みんなになじみがあるんだぞ! このアセトアルデヒドは、お酒に酔うときの原因となる物質なんだ。お酒を飲んでアルコールが体内に吸収されると、血液中でアセトアルデヒドに変化するのさ。そうすると、顔が赤くなり、心臓がどきどきしたり、ひどくなると気分が悪くなったり、ついには二日酔いに・・・・・みんなも経験があるよね。これの原因がアセトアルデヒド! こんなに身近な物質が関係してるんだね。
で、僕たちが渋抜きをする方法はいろいろあるけど、、お湯につけたり、焼酎をふりかけて密閉したり、ドライアイスを入れた袋に密閉したりするのは、みんな柿の実の呼吸を止めているんだよ。呼吸というとみんなは変な顔をしそうだけど、植物は光合成だけでなく、僕たちと同じように酸素を吸って二酸化炭素をはき出す呼吸もしっかりとしてるんだよ。この呼吸を止めてやるとアセトアルデヒドができてくるんだ。因みに、干し柿にすると甘くなるのは、皮を剥いて干すと果実の表面が堅くなり酸素が果肉の中に通らなって、呼吸できなくなるからなんだよ。しかも水分も減って甘みが濃縮されるから余計に甘くなるんだね。
渋柿も木の上で自然に熟してくると、だんだんと渋が抜けて最後には甘くなるんだけど、これは柿の実の中で種ができあがるにつれてアセトアルデヒドが作られていくからなんだ。そして、水に溶けなくなったタンニンが果肉の中で姿を変えたのが、あのゴマのような黒い斑点なんだよ。
じゃあ、どうして種ができあがるにつれて渋が抜けていくのかって? 柿は実を動物に食べてもらって、種を広範囲に運んでもらい、子孫の成育場所を広げていく戦略をとっているので、種ができあがる前に食べられてしまったら元も子もないよね。だから、種ができあがるまでは渋くて動物に食べられないようにしていて、種ができあがると渋みが抜けて甘くなり動物に好んで食べてもらえるようになるんだ。どう、解ったかな?

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