レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

株式会社琴海堂 代表取締役社長 山本洋一さんをお迎えして

2014/3/28 

399nishi-garden「やっと来ていただくことができました。」と白井が紹介したのは長崎・琴海堂の山本洋一社長。カステラ一筋60年、和三盆カステラが初めて阪急青いギフトカタログでご紹介された時は注文が殺到し、2台のオーブンを早朝から深夜までフル回転させ、息子さんと一緒に寝る間を惜しんで焼き続けられたそう。
「おいしいと言われるカステラをいくつも食べ比べた末にたどり着いたのが琴海堂さんの味。おいしさの秘訣は何ですか」「カステラの材料は砂糖・卵・小麦粉・水飴の4つだけ。そこでどれだけ良い素材を使うかということですね。産みたての新鮮な卵、小麦粉は減らしてできるだけ卵を多くします。砂糖は和三盆を。でも和三盆だけでも上手くいかないので上白糖との合わせ方を工夫して。水飴は米から作られたものを。添加物は一切使いません。冷凍保存もしませんねぇ。作る側の都合じゃなくて、食べてくれる人に喜んでもらうのが一番大事ですから」。
長年山本さんを支えてこられたのは奥様の香子さん。「サラリーマンと結婚したつもりが・・・」結婚後間もなく、山本さんがカステラ職人として独立。手動で温度計もない中古のオーブンひとつで、今の場所に開業されたのは44年前。実直な職人の腕と思いを受け止めて、全力で支えて来られました。
現在、山本さんが操る年代もののオーブンは2代目。周辺の会社が休みになる休日は電圧が上がり火加減が変わるのを、職人の経験と勘でいつもと同じように焼き上げます。「温度が低いと卵焼きのようになってしまいます。良い温度でも完全に焼けてないと中心がへこみます。逆に膨らんだものは時間が経つと落ち着いて真っ平らになります。焼いてすぐより、少し時間が経ったほうが味は良くなります。」熟成しておいしくなると聞いてみんな「へぇ~」。
「ついに従業員さんを入れられたそうですね」「はい。長崎カステラのいい職人を育てたいと。自分の経験から5年間なんとか頑張れば見えてくるものがあると思いますが続く人ばかりではないですね。私も独立の時、良くしてもらいました。今度は自分で店を持ちたいと思う人の力になれればと。」次の世代へ技をつなぎます。夢はと聞かれ「早く引退したいですね」と笑いながら答えられた山本さんは、まだまだ休日返上でお仕事に励まれる毎日。「今はオーブンが8台になりました」と言われると会場から拍手が。「技だけでなく、作る人の思いが入ってこそ、あのおいしいカステラができるんですね」と白井もしみじみ。
コツコツと積み上げてきた誠実な毎日、独立してから苦労をかけてきた奥様にやっと恩返しができるようになったと、一昨年初めてお二人でご旅行に。「大変な時でも心遣いをしてくれる人です。苦労はいずれ報われるもの。家族も従業員もみんなが幸せになってもらいたい」そんな香子さんの言葉に会場も幸せを感じ、優しいカステラの味わいに力をもらったひとときでした。
試食は和三盆カステラと『カラダにやさしいレシピ集』から旬の鰆を使った「鰆の木の芽ソース和え」を。(文:土田)

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