レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

学術博士 伝承料理研究家 奥村彪生先生をお迎えして

2012/10/26 

275nishi-garden「蓮葉はかくこそあるもの・・・」と万葉の和歌の紹介から始まったセミナー。美しい人を蓮の葉にたとえ、わが家の妻の容貌を芋の葉にたとえる内容なのだそう。「けど、いも母ちゃんは飽きないでしょ?」と語りかけ、里芋の炊き込みご飯の作り方を教えてくださったのは伝承料理研究家の奥村彪生先生。
手早く目分量で調味料を入れ、ペロリと味見。「子供の頃から食べている我が家の味です。舌が覚えた味は一生忘れません。」とニッコリ。「惣菜は家庭でご飯と食べるもの。里芋も皮をむいてからもみ洗いしたらダメですよ。家では栄(営)養のあるぬめりは残してください。家庭料理は食べる人の心(精神)と体を作るもの。」など楽しくコツを伝授下さいました。
料理学校入学から2ヶ月。「質問のしすぎで授業が前に進まない」と退学を土井勝先生から持ちかけられても「料理は科学。どんなことにも理由や根拠があるはず。」と筋を通して考えを伝え、そのまま職員として迎えられることに。 福島県の食品スーパーの子会社の社長の依頼で47年前、週末夜行列車で福島県郡山市に通いながら始まった惣菜の指導。「買って食べてくれる人のことまで考える」ことを念頭に、北海道の真昆布や本枯れ節を使い、契約農家から畑ごと野菜を仕入れ、選別をし、それぞれに合った調理方法で美味しく仕上げたり、キャベツの芯や外の葉は刻んで餃子に使うなど、大切に作られた食材をまるごと活用する工夫を重ねた惣菜は、「安くて質がよくておいしい」と人気を呼び、惣菜が大きな収益をあげるスーパーとして東北でもその業界でも有名になられています。
阪急阪神百貨店の『六斎』でも「奥村彪生料理弁当」は人気の定番。「季節を感じられる食材、健康を考えて野菜もたっぷり使います。時間が経っても美味しいものをと考えて、焼き物・煮物・和え物が中心です。」と話されます。
大阪教育大の故・篠田統先生との出会いは大きな転機に。「料理人からみた箸文化」という題で講演の依頼を受けたご縁から、休日ご自宅で教えていただくことになり、そこから民族学博物館の旧館長でもあった石毛直道先生にも出会われ、親交を深められます。「机の上の学問は畳の上の水練、実学は強いのぅと私の話を面白がってくれる中、食の文化的な背景や歴史を知ることの大切を篠田先生から学ばせてもらったと思います。」と振り返られます。その後も料理の腕と知識を買われ、京都大学大学院や民族学博物館の共同研究に参加されるなど活動の幅をどんどん広げられ、70歳で博士号を取られた奥村先生。日本の食文化に大きく貢献された人に贈られる第1回辻静雄食文化賞も受賞されました。
「本来、食は生きる根源。最近は食をちょっと遊びごとにしてますなぁ。」とひょうひょうとした風情の中に重みのあるお言葉。私たちが受け継いで行きたい食への思いが楽しいお話の中にたくさん散りばめられていました。夢は「NHKの紅白の舞台で万葉歌を歌って踊ること」と語られ、最後は音階がむつかしい万葉歌を朗々と歌い上げ、笑顔でセミナーを締めくくられました。

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